全教科で
 嶋澪浬は学校の勉強は苦手である、俗にもう少し頑張りましょうと言われる成績だ。だが今回のテストは違っていた。
「えっ、全教科!?」
「全教科追試!?」
「あんたそうなったの」
「全部の教科でって」
「いや、やっちゃったわ」
 流石の澪浬も困った顔で友人達に答えた。
「今回は」
「やっちゃったどころじゃないでしょ」
「全教科って何よ」
「これ下手したら留年でしょ」
「下手しなくてもやばいでしょ」
「うん、本当に担任の先生に言われたわ」
 困った顔のまま言う澪浬だった。
「このままだとね」
「本当にやばいってよね」
「留年だって」
「そう言われたのよね」
「ええ、だから今度の追試は」
 それではというのだ。
「絶対にって言われたわ」
「全教科合格ね」
「そうなれって言われたのね」
「そうしろって」
「そうなの、本当にね」
 絶対にというのだ。
「言われたわ」
「じゃあ絶対に合格しないとね」
「全教科ね」
「留年しない為によ」
「そうならないと駄目よ」
「わかってるけれど」
 澪浬の表情は変わらない、困った顔のままだ。それでその顔のままでまた友人達にこう言うのだった。
「全教科ってね」
「いや、普通はね」
「全教科そのまま追試にならないでしょ」
「普通の成績なら」
「大丈夫でしょ」
「いや、それがよ」
 澪浬の場合はというのだ。
「何かと難しいのよ」
「澪浬の場合は」
「それは無理だっていうのね」
「そうだっていうのね」
「成績が悪いから」
「元々学校の勉強はね」
 それこそ澪浬が物心ついたころからだ。
「出来ないから」
「それでなのね」
「そもそも全教科合格したことはない」
「そうだっていうのね」
「そうよ、普段は三教科か四教科だったけれど」 
 追試の数、それがだ。
「それがね」
「今回は全教科になった」
「これってある意味凄いけれど」
「全教科追試はやばいわね」
「本当に留年見えてるわよ」
「出席日数は大丈夫だけれど」
 こちらは無遅刻無欠席である。
「どうなのかしら」
「いや、出席日数がよくても」
「全教科追試は本当にやばいから」
「追試何とか乗り越えないと」
「頑張って」
「ええ、じゃあ」
 それならとだ、あらためて言った澪浬だった。
「ここは勉強しかないわね」
「それしかないでしょ」
「何なら勉強付き合うから」
「もう何でも言って」
「テスト勉強手伝うから」
「全教科合格しましょう」
「うん、じゃあね」
 こうしてだった、澪浬は友人達の協力を得てそのうえで追試の勉強に入った。そうして勉強をはじめるが。
 しかしだ、友人達は澪浬の勉強の有様を見て唖然として言った。
「あの、頭に入ってる?」
「さっきからこの公式何度も言ってるけれど」
「頭に入ってる?」
「大丈夫なの?」
「何度読んでも」
 それでもとだ、澪浬は友人達に答えた。
「それがね」
「頭に入らないの?」
「この公式が」
「そうなの」
「ええ、何でかしら」
 数学の教科書を読みながらだった、澪浬は言った。
「全然頭に入らないなんて」
「いや、そこはちゃんとね」
「もう必死に公式頭に入れないと」
「さもないとどうしようもないわよ」
「まずは覚えないと」
「学校の勉強ってそれからじゃない」
「わかってるけれど」
 それでもというのだ。
「頭に入らないのよ」
「じゃあ無理にでも入れなさいよ」
「書くなり声出して読むなり」
「いつも見てれば無理にでも頭に入るし」
「そうしなさいよ」
 友人達は澪浬にこう言って数学の公式だけでなく他の教科でもテスト範囲で覚えないといけないことをわかりやすく覚えやすくそして必死に教えた、すると流石の澪浬もかなり苦労したがそれでもだった。
 数学の公式も他の覚えなければならないことも頭に入ってきた。
「ええと、三十年戦争はね」
「ええ、何時から何時まで?」
「それでどういった戦争?」
「一六十八年から一六四十八年で」
 まずはその行われた年から答えた。
「カトリックとプロテスタントの戦争ね」
「そうよ」
「それでいいから」
「じゃあ何処と何処の戦争?」
「神聖ローマ帝国、ハプスブルク家とプロテスタントの諸侯と」
 参戦国についてもだ、澪浬は答えた。
「デンマーク、スウェーデン、フランス、あとスペインね」
「合格よ」
「ちゃんと頭に入ってるわね」
「その通りよ」
 友人達もそれでいいと述べた。
「合格だから」
「それでいいわよ」
「じゃあ世界史は問題なしね」
「次は英語だけれど」
 英文法をしたがそちらもちゃんとわかりやすい覚え方で覚えていた、それで澪浬は追試に挑んだが。
 澪浬は担任の先生から追試の結果を聞いてから友人達に笑顔で話した。
「よかったわ」
「よかったってことは合格ね」
「追試全部クリアーしたの」
「そうなったのね」
「なったわ」
 実際にとだ、澪浬は友人達に笑顔のまま答えた。
「皆のお陰でね」
「よかったわね」
「私達も聞いてほっとしたわ」
「若し駄目だったらって思って」
「そうなったけれど」
 それでもとだ、友人達は澪浬にほっとした顔で話した。
「本当によかったわ」
「やれやれだったわ、今回」
「よりによって全教科追試とか」
「幾ら何でもないって思ったけれど」
「よく合格出来たわ」
「本当にほっとしたわよ」
「そうよね。私もね」
 自分自身もと言う澪浬だった。
「流石に今回ばかりはって思ったけれど」
「全く、しっかりしなさいよ」
「幾ら最後はどうにかなるのがあんたの常でもよ」
「全教科追試って駄目過ぎるでしょ」
「今度はそうならない様にね」
「三教科か四教科にね」
 それだけにというのだ。
「なる様にしていくわ」
「いや、全教科最初からクリアーしないと」
「それが普通だから」
「勉強もしっかりしなさい」
「最初から勉強しないと駄目よ」
 友人達は笑って言う澪浬にどうかという顔で忠告した、だが彼女を含めて全員で今は難を乗り越えたことを喜んだ。そうしてお祝いにこの日の放課後はカラオケボックスに行ってそこで歌って遊んで楽しんだ。


全教科で   完


                2018・10・23

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