鯖は偉大デス
 嶺南ミカミちゃんは福井県でニュースキャスターを務めている妖精だ、その好物は地元名物の鯖である。
 鯖についてだ、ミカミはいつもこう言っていた。
「栄養素の塊デス」
「そうそう、そうなんだよ」
 ミカミがいる福井県敦賀市のお役所の人がミカミのその言葉にその通りだと同意して頷く。
「青魚の中でもね」
「最高に栄養があるのデス」
「その通り、しかも味もいい」
「焼いても煮ても美味しいのデス」
「味噌煮にしてもいいね」
「鯖素麺も最高なのデス」
 この料理もというのだ。
「新鮮ならお刺身も出来マス」
「それね、新鮮なの限定だけれど」
「これはもう破壊力抜群なのデス」
 そこまで美味しいというのだ。
「九州にはゴマサバがあるデスが」
「ああ、福岡とか佐賀にね」
「福井のお料理ではないデスが」 
 あくまで九州、あちらの料理である」
「しかしデス」
「美味しいよね」
「本当に鯖はいいお魚デス」
「福井は他にも美味しいお魚が多いけれど」
 魚の名産地である北陸らしくだ。
「鯖は甘く見たらいけないよ」
「しめ鯖もあるのです」
「関西だとバッテラもあるしね」
 寿司のネタの一つだ。
「本当にね」
「鯖はいいお魚デス」
「そのこと福井県、そして我が敦賀市でもピーアールしていくから」
「だから私にもデスね」
「うん、仕事頑張ってね」
「わかっているのデス」
 ミカミは明るい声で応えた、とはいっても自衛官ではないので敬礼はしなかった、だがその自衛官の人達がだ。
 実は敦賀市の結構近くに恐怖舞鶴市がある、知る人ぞ知る大日本帝国海軍の時からの海上自衛隊の重要な基地の一つだ。
 その海上自衛隊の基地でだ、一つ問題が起こっていた。
「自衛官の人達が疲れているのデス?」
「うん、どうやらね」
 敦賀市役所の人がミカミに話した。
「ここ最近災害が多いよね」
「はい、そしてその度にデスね」
「自衛隊の人達が救助にあたってるね」
「お勤めご苦労様です」
「今年特に災害が多くて」
 それで災害救助にあたることが多くてだ。
「それで最近疲れているらしいんだ」
「そうなのです」
「それで敦賀市ひいては福井県として国の為に働いてくれている自衛隊の人達にどうにかして元気になってもらいたい」
「そう考えてデスね」
「何か食べるものを贈って」
 そうしてというのだ。
「元気になってもらおうかってね」
「そうしたお話になっているのデスか」
「そうなんだ、それでミカミちゃんとしてはいい案があるかな」
 お役所の人はミカミにあらためて尋ねた。
「何かね」
「それならデス」
 ミカミは役所の人の話を最後まで聞いて答えた。
「一つあるのデス」
「それは何かな」
「はい、鯖デス」
 この魚だとだ、ミカミはお役所の人に話した。
「それを食べればデス」
「鯖だね」
「栄養の塊です、色々なお料理に出来ますし」
「だからだね」
「鯖を食べてもらって」
 この魚を大量にというのだ。
「元気になってもらいましょう」
「いい考えだね、鯖ならね」
 この魚ならとだ、お役所の人も確かな声で応えた。
「確かに美味しくて色々な料理の方法があって」
「しかも栄養の塊デス」
「自衛隊の人達も元気が出るね」
「そうデス、ここは鯖デス」
 ミカミは今度は力説した。
「あのお魚を舞鶴の自衛隊の人達に送りましょう」
「ではね」
「私からお話するのデス」
 ミカミは自ら名乗りを挙げた、そしてだった。
 ミカミは福井県の知事や敦賀市の市長といった人に持論を展開した、すると誰もがミカミの言う通りに鯖ならと思ってだった。
 それで舞鶴の海上自衛隊の人達に多くの鯖を贈ることにした、様々な料理のレシピも紹介したうえで。
 するとだ、自衛官の人達は様々な鯖料理ミカミが敦賀市のお役所の人達に熱く話したその料理を食べて。 
 鯖の美味しさに気力を、栄養に体力を回復させた。こうして自衛隊の人達は度重なる災害救助の疲れから抜け出ることが出来た。
 その自衛隊の人達の感謝の声は福井県の人達だけなくその中にいる提案者であるミカミにも向けられたが。
 しかしミカミはこう言うだけだった。
「私は何もしていないのデス」
「そうかな」
「ただ鯖を薦めただけデス」
 この時も敦賀市のお役所の人に話した。
「そうなのデス」
「それだけなんだ」
「そうなのデス」
 それに過ぎないというのだ。
「それだけなのデス」
「じゃあ自衛隊の人達か感謝するのは」
「贈ることを決めて実際に贈った人達、獲った漁師さん達と」
 そしてというのだ。
「鯖にです」
「鯖そのものになんだ」
「そうなのデス、鯖の美味しさと栄養が自衛官さん達を回復させてくれたのデスから」
 そうだからだというのだ。
「私よりもデス」
「鯖にだね」
「感謝して欲しいデス」
「成程ね、じゃあ自衛隊の人達には」
「鯖の素晴らしさに感謝して欲しいデス」
 こう言って自分への感謝はいい、鯖にと言った。そうしてこの日の夜ミカミは仕事が終わると敦賀の港にある居酒屋に入って新鮮な鯖の刺身とお酒で自衛官の人達を元気にしてくれた鯖に乾杯した、その鯖の味は最高のものだった。酒にも実によく合いミカミ自身にも明日への活力を与えてくれた。


鯖は偉大デス   完


                  2018・10・24

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