最近、異世界に行くのが流行っているらしい。俺もネットで調べた方法を使い、異世界へ飛ぶことにした。
(ファンタジー希望ファンタジー希望!彼女が欲しいから、可愛い女の子いてほしいな……)
目を開けると、人が大勢いたので驚いた。長く豪華なテーブルに、ざっと三十人は座っている。壁紙も美しい模様が描かれた、贅沢なものである。どうやらファンタジーの世界に飛べたようだ。俺は内心にやにやしながら、怪しまれない様存在感を薄くした。
「まだの人はいーひんかー?」
(あれっ?)
なんだか、聞いたことのある方言だ。中学生のときまで住んでいた地域の言葉に、そっくりである。改めて聞くと、ほんわかしていて優しい印象を抱く。懐かしいな。ファンタジーっぽくないけど。
「お茶を飲んで、騎士の契約を終えてくださーい」
「お椀貰うでー」
声が飛び交う。新しい世界で聞いた「騎士の契約」という単語に心を踊らせた俺は、目の前に置いてあったお茶を一気飲みした。渋みと苦味が、旨味をぐっと引き立てる。うちではこんな美味しい緑茶を飲んだことがないから、きっと高級な茶葉を使っているのだろう。
……すると、近くに座っていた人達がこちらをちらちら見始めた。やばい。状況を掴めぬ内から、目立ちたくなかったのに。
「あ、あの……」恐る恐る尋ねる。「俺なんか、やっちゃいましたかね……?」
隣の男が、目を逸らしながら答える。
「え、いや、そのお茶は……」
言葉を濁す彼を不思議がっていると、奥から豪華な服を来た男性がやってきた。毛皮のマントを見るのは初めてだ。貴族、もしかしたら、王様かもしれない。
「おお、素晴らしい!」
「え……?」
「その茶―飲んでくれたんか!息子が鼻水垂らしてもて、誰も飲んでくれんから困ってたんや。儀式に使う高い茶―やから、もったいなくて置いといたんよ」
うげー。俺は、子供の鼻水が入ったお茶を飲んでしまったのか。旨味がどうとか思ってたのが、馬鹿みたいじゃないか。
「皆、彼の心意気に拍手送ったって」
周りの人達から拍手喝采を受けてしまったので、俺は訂正できなかった。でもなんだか、恥ずかしいけど嬉しい。
騎士の契約が終わり、各自訓練の時間になったので、俺は訓練するよりもまず情報収集をすることにした。そもそもここがどこなのか、なぜ騎士団があるのか、分からなかったからだ。
「うわあっ、綺麗だな」
部屋の外に出て、思わず息を呑んだ。大きな湖のある絶景が一望できたからだ。ここは、他のところよりも高い建物らしい。廊下を一周すると、住宅街や山も見渡せた。
(まるで琵琶湖みたいだ)
こんな大きな湖を見るのは、十年ぶりである。足元に広がる自然が、よく遊びに行った豊公園にとてもよく似ていたので、わくわくしながら早足で階段を駆け下りた。
(懐かしいなー!長浜も、こんな感じだったよなあ)
長浜――それが、小さい時分住んでいた街の名前だ。親の転勤で引っ越してしまったが、いつか訪れたいところである。
呼吸を鎮めたが、興奮が収まらなかった。密集した木々から、桜吹雪が舞っている。小さいとき、豊公園で花見したのを思い出す。
(本当にそっくりだなあ)
振り返って元いた建物を見てみると、長浜城まんまのそれがそびえ立っていた。俺はどうやら、長浜市に転送されたようだ。城内がファンタジーっぽかったから、期待してたのに。
桜の絨毯にお腹をくっつけて、猫が魚を食べている。少し歩いて、湖から捕まえてきたのだろうか。琵琶湖で釣りをする人は多いし、いらない魚をおすそ分けしてもらったのかもしれない。俺をじっと見てきたので、邪魔をしないようにゆっくり後ずさる。
「伏せろっ!」
突然、叫び声が聞こえた。自分に向けられたものだと理解したが、身を竦めるので精一杯だった。直後背中に、殴られたような痛みが走る。
「……てぇー!」
声の主が走ってくる。
「大丈夫か!?こら、あっち行き!しっし!」
筋肉の中まで響くような、地味な痛さが続く中、なにが起こったのか周囲を確認する。俺を殴った犯人を探すと、魚が逃げていくのを認めた。
「うわあっ!?魚が飛んでる!」
衝撃の光景に、腰を抜かしてしまった。「伏せろ」と注意してくれた男が、魚を睨みつける。
「なんや、ここの人ちゃうんか?」
「は、はい。遠いところから来たんです」
「ほうなんか。えらいときに来てもたなあ……」
えらいとき……。大変なときという意味だ。長浜では、体調が悪いという意味でも使うときがあるけれども。男性は心の底から同情するような言い方をした。よっぽど「えらいとき」なのだろう。
「今この街で、なにが起こってるんですか?そもそもここは、なんて街なんですか」
異世界に行ったら、自分を変えたいと考えていたので、勇気を出して言葉を綴った。幸い彼は、質問しやすそうだ。方言を話しているから、そう感じるのだろうか。
「ほれも知らんのかあ。ここは、ナーガ・ハーマや」
「ぶっ」
吹き出してしまったのを、咳をして無理矢理ごまかした。
(本当に長浜……いや、ナーガ・ハーマなのか!)
「さっき魚が飛んどったやろ。あいつらはな、ここ数年でマザーから上がってくるようになったんよ」
「マザー……。もしかして、あの湖のことですか」
「ほうやで」
再び俺は失笑した。元いた世界でも、琵琶湖は「マザーレイク」と呼ばれ、親しまれていたっけ。
原因は分からないが、魚たちは日に日に行動範囲を広げていき、やがて「コクハチ」(国道八号線のことだろう)まで飛べるようになったそうだ。途中で力尽きた魚の処分にも困っているし、なにより人を襲うので、小さい子供の外出が自粛されており、ナーガ・ハーマの民は鬱々としているらしい。
「へえ……そうなんですか」
「分かったら、気をつけるんやで」
「はい、ありがとうございます!」
男性と別れ、周りを警戒しながら長浜駅の方に向かった。東口には黒壁スクエアと呼ばれる区画があり、いつも賑わっていたのを思い出したからだ。観光ついでに色んな人に話を聞いてみよう。
豊公園から出ると、湖岸道路が走っている。ここを北に走ると、やがて山が見え、木之本や余呉湖の方に行ける。南は、ずっと琵琶湖を楽しみながら、彦根、もっと先の大津まで行ける。夏になると、鳥人間コンテストの会場を見られるときもあったっけ。北も南も、この道をお父さんとドライブするのが、大好きだった。
そんな湖岸道路を横断するとすぐ、長浜駅だ。ここも、俺がいた世界と変わりない。駅にはステンドグラスの作品がいくつかあり、中でも東口に飾られたそれは壮観である。さあエスカレータを降りようと思って前を向くと、視界が色ガラスで埋め尽くされるのだ。十年ぶりに見たが、感動してしまった。
(あれ?駅前、都会っぽくなってる)
駅にはペデストリアンデッキが建設されたようで、ロータリーを回らなくても、向かいの建物に入れるようになっていた。俺はデッキを利用して、おしゃれな建物の中を通って黒壁を向かうことにした。
(伊吹山だ)
この辺の学校の校歌には、必ず入っているであろう「伊吹山」と「琵琶湖」。登ったことがあるけど、結構花が咲いていて綺麗だった覚えがある。最近身体が鈍っているので、また運動がてら行ってみたいな。
もうすぐ黒壁に着くが、ここまで歩行者を見かけなかった。やはり、魚が怖くて気軽に外を歩けないようだ。実際俺も、内心びくびくしながら歩いている。さっきみたいな攻撃はもう、食らいたくない。
名前の通り、黒い壁の建物が並ぶ、長浜市の観光スポットにやってきた。食べ物屋も沢山あるが、黒壁の魅力といえばやはり、ガラスだろう。小学生のときにとんぼ玉を作ったの、楽しかったなあ。酒を飲む年齢になったし、綺麗なグラスでも探そうか。
(おっと、いけない。ナーガ・ハーマのことを訊くんだった)
でも足が、勝手に店へ……。きっと胃が司令を出してるんだ。しばらく飯を食ってなかったからな。
とろみのついた出汁のあつあつうどんを平らげ、店のおばちゃんに話を聞いてみることにした。
「すみません、ちょっといいですか」
「はいはい、なんでしょ」
「騎士団に入ったばかりなので、改めてナーガ・ハーマの現状を聞きたくて……」
「ほうやなあ……」おばちゃんは溜息を吐いた。「魚のせいで、もうお客さんもきゃーれんくて、困ってるんです。騎士団って言っても、道端に落ちたる魚処分したり、追い払ったりするだけで、なーんも解決になったらへん。酒ばっか飲んでやーる」
「ああほんま、よぞくろしい!」と言って、おばちゃんはお茶を足してくれた。よぞくろしいなんて、初めて知る単語だ。なんかめちゃくちゃ悪い意味なのだろう。街の人は皆、魚を恨んでいるらしい。
長浜は観光資源が豊富で、美味しい飲食店も沢山ある。魚のせいで人が来なくなると、商売している人達には大打撃だ。縁があってこのナーガ・ハーマに来たのだし、この手でなんとかしたい。
閉めている店の多い黒壁をうろついて、俺は城へ戻った。遊具の多い公園が道中にあるが、やはり誰もいない。いつも子供で賑わっていたのだが。
城に戻ると、昼食を済ませたであろう騎士達が、研修のようなものを受けていた。もし魚が襲ってきたら、携帯している棒で叩き落とす。その後、袋に入れて焼却場や城へ。まるで、家に虫が出てきたときのような対応だ。皆、慣れない手つきで練習していた。
「あのー……」ここで、一つの疑問が浮かぶ。「食べないんですか?」
先輩騎士は、質問の意味が理解できないといったような表情をした。
「食べる……?なにを?」
「その魚です。それ、鮎ですよね?食べたら美味しいやないですか」
周りがざわめく。なんだか、こっちに来たときもこんな感じだったなあ。
「食べられるんか?これ……」
「こんなん食べるのやーやわ……」
あちらも予想外だっただろうが、俺も予想外の反応をされてショックだ。この世界では、魚を食べないのだろうか……。ナーガ・ハーマで上手くやっていけるか不安になってきた。
「……うーん。じゃあちょっと、やってみんか?」
先輩騎士は、城内の厨房へ案内してくれた。研修を受けていた人達も、何人か見に来る。
俺の前には、状態のいい魚がいくつか用意された。鮎や鮒、それに小鮎なんかもいる。小鮎は、大人でも五センチくらいしかない品種だ。群れて襲ってくるから厄介らしい。考え方を変えると、一気に食料が確保できるということだ。
さて、どうしようかな。おばあちゃんが作っていたのを思い出しながら、小鮎の佃煮を作ってみることにした。煮詰めている間、大きい方の鮎を、適当に塩焼きにして渡す。ひれが焦げてしまったが、まあ及第点だろう。
その場にいた人達は、躊躇いながらも鮎の腹を齧った。俺も、久しぶりに食べてみる。淡白ながらも力強い香りが鼻腔を満たし、身はほろっと崩れる。全員が、こう感じただろう。こんなに美味い食べ物があったのかと。
「お、おお……!これは王に報告せねば!」
鮎の塩焼き、食べるの大好きだったなあ。内蔵の部分は、いつもお父さんに食べてもらっていた。苦味が美味しいと感じるのは、ちょっぴり大人になった証拠だろうか。酒が飲みたくなってくる。滋賀県は米どころだから、旨い日本酒が沢山あるんだろうなあ。ナーガ・ハーマにいるのに、どんどん長浜が恋しくなってくる。
やってきた「王」は、お茶の件で俺のことを褒め称えてくれた人だった。一目見るなりあちらも分かったようで、
「おお、昼間の!なんかおもろいことしてくれたんやってな?」
と笑顔で話しかけてきた。少々時間を貰い、鮎を再び焼いて王に差し上げる。彼は何度も旨いと言って平らげ、どこからか酒を持ってきた。
「こらええわ。皆で飲もや!」
鶴の一声で、各々がグラスを用意し始めた。黒壁のものだろうか、それらはどれも美しく、日本酒が注がれると手に青色の光が落ちる。視覚が満たされることで、美味しさが二倍にも三倍にも感じられた。
(騎士団の人達が酒ばかり飲んでるっていうのは、本当だったんだな。こんないいグラスが揃ってるんだもの)
粒山椒が用意できたので、これを大鍋に入れ(絶対に忘れてはならない)、小鮎の佃煮が完成した。塩焼きを食べてお腹を空かせた王が、今か今かとこちらを見ている。ここで俺は、ただ盛るのではなく、交差させるように小鮎を重ねてみた。上に粒山椒を添えて、ちょっと見栄え良くしてみる。
「ああ、ええなあ」
十年越しの驚きだ。小鮎の佃煮って、こんなに酒と合ったのか。甘辛く炊いた小鮎と、きりっと舌を引き締める日本酒。思わず飲むペースが上がっていき、遂に頬が熱を持ち始めた。
「刺し身にしても美味しい魚もいますし、小鮎みたいに佃煮にすれば、結構日持ちするんですよ。びわ……マザーの恵みをぉ、ちゃんと貰わなあかんのです!ふなずしはひがけんみんのちぇ~のけっしょうなんれすよ!」
酔った勢いで語ると、王が俺の肩を組んで「あんたの言う通りや」と涙した。なぜだかそれにつられて、数人がおいおいと泣き始める。ここにはもう、酔っぱらいしかおへん。
――クルシイ……タスケテ……。
夢だろうか?声がして、目が覚めた。
酔い潰れたおっさん達を踏まないように歩き、トイレを済ませて外に出る。ひんやりした空気が身体にまとわりついて、伊吹山の方は朝日が空を朱く染めていた。頭がぼーっとするが、気持ちのいい朝だ。
――クルシイヨォ……。
また、声が聞こえた。魚がいないか注意しながら湖岸に向かうと、琵琶湖のすぐそばまで来た。声は、マザーから聞こえてくる。
(ん……?)
湖が汚い気がする。長い木の枝を探してきた俺は、湖に浸してみた。すると、僅か十センチ足らず刺したところで、枝先が見えなくなってしまった。
(ひょっとすると、水が汚くて魚が苦しんでいる……?)
「ほうなんよ」
急に声がして驚いた。振り返ると、可愛らしい女の子が立っていた。……ただし、頭に鴨の帽子を被り、お尻もきぐるみみたいなのを着けているが。
「水がばばちいんよ。あかんこなんよ」
女の子は、些か悲しそうな顔をした。目線の高さを合わせて、「なんで汚くなったの?」と尋ねる。
「人間さんがごみほかさあるん。ととさんは苦しんでやあるんよ。ういことなん」
我々人間が、マザーを汚染しているという。ういことというのは、可哀想という意味だ。
「やから魚がお空泳いでるんか?」
「ほうなんよ。うちもお尻が汚れてもたん。これから、ヨーゴ湖まで水浴びに行くんよ」
ヨーゴ湖……余呉湖のことだろうか。水面が穏やかだから、写真に撮ると鏡みたいに綺麗でよく映える。鴨の少女は、お尻を覗き込みながらぷりぷりさせた。
「ほうなんか。教えてくれてありがとう」
「ほぉい。冬になると、鴨の猟が解禁されるから、またよばれてなあ」
「……ええんか?」
「ええよぉ。美味しくよばれてくれた方が、嬉しいんよ。ととさんも同じ気持ちなん」
なんだか、昨日魚の調理を提案したことが、申し訳なくなってきた。でも、美味しいから仕方ないのだ。そのまま廃棄されてしまうより、食べられて人間の血や肉となった方が、生き物たちも浮かばれる。
また会おうと言って、俺はナーガ・ハーマ城まで戻った。二日酔いの王を叩き起こし、なぜ魚たちが上陸し始めたかを熱弁する。王は話を聞いてすぐ、行動を起こした。
駅前通りを東に進んだところにある、黒くてスタイリッシュな建物に対策本部が出来た。市役所がなくなっていたから、恐らくここが新しい市役所なのだろう。長浜市……ナーガ・ハーマは、結構潤っているようだ。
まずは、水質汚濁の原因が調べられた。ごみはもちろん、排水による富栄養化で、アオコが大量発生していたのだ。アオコのせいで水中植物は光合成ができなくなり、自身も呼吸をするので、酸素がどんどん減って魚たちが窒息死してしまう。それで、息苦しくなった彼らは、住む場所を求めて地上に出てきたというわけだ。このまま水質が悪化していくと、臭いがひどくなってくるし、住民の飲料水が確保できなくなってしまう。
元いた世界では、高度経済成長期に、琵琶湖の水質汚濁が大問題になっていた。そこで、「琵琶湖を綺麗にしようね」みたいな名前の条例が出来、県内ではリンを含んだ洗剤が使えなくなった。小学校のときに習うので、滋賀県民はそこそこ知っていることだろう。案の定リンの件はすぐに判明し、近い内に販売自粛されることとなった。
街の人達の反応は、俺の予想を遥かに上回っていた。新聞やびわ湖放送で取り上げられてすぐ、多くの老若男女が河川を訪れてゴミ拾いを始めたのだ。来たばかりで実感がなかったが、ここに住んでいた者は皆、魚に怯える長くつらい日々を過ごしてきたのだろう。
そして、ゴミ拾いを終えた後は、仲良く魚料理を頬張った。ビワマスの刺身は上品なサーモンのような味で、舌の上で甘い脂がとろける。鮒の子まぶし、これは、刺身に茹でた鮒の卵をまぶしたものだ。また、湖には大きな鰻が生息しているし、大量に作った小鮎の佃煮は大好評だった。水質が戻る頃には鮒寿司も完成するだろう。久しぶりに外出する子供達の笑顔が、眩しかった。
「また会えたね」
湖岸を歩いていると、鴨の女の子と再会した。波と砂がこすれる音を耳に感じながら、彼女はマザーをじっと見つめていた。
「びわ……マザーは近い内に、綺麗になるよ。安心して」
女の子は俺を見て、柔らかな笑みを浮かべる。
「おおきに。ほっこりおせんどさん」
おせんどさん。おつかれさま、という意味だ。優しい言葉である。こちらに来てからずっと気張っていたので、初めて報われたと安堵できた。
「俺な、しばらくナーガ・ハーマを離れることにしたん」
なんでなん?と問われた。俺は彼女に、異世界から来たこと、ここで過ごして、元の世界の長浜が恋しくなったことを伝えた。鴨の女の子は、悲しそうな表情をした。
「またもんできて?」
「もちろん。絶対帰ってくるよ!」
しゃがんで、と催促され、従うと、愛らしい顔が近づいた。ほっぺたにちゅーされそうだ。そういえば、異世界で彼女が作れるといいなあと思ってたけど……。ちっちゃい子に懐いてもらえたし、それでいっか。
と思っていたら、口ではなく、頭に載っている鴨帽子のくちばしでちゅーされた。俺に春は、まだまだ来うへんわ。
さて、元の世界に帰ったらすぐ、長浜に行こう。ちょっと贅沢して、近江牛のステーキを食べたいな。長浜城や鉄道博物館、竹生島、黒壁なんかを巡って、歴史や文化に触れるのもいいな。
夜は、湖(うみ)の見える部屋に泊まって酒を飲もう。綺麗なグラスに、少しずつ注ぎながら。
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