プロローグ

 一面、真っ白な世界であった。
 ドカユキンの頭部に備え付けられたアナログアンテナに内蔵されているロードセルは、積雪量一二五三ミリを計測していた。
 この純白の世界のどこかに潜んでいる“敵”の気配を、ドカユキンは探っていた。
 ここか?
 そちらか!
 ドカユキンの右斜め横四三度前方三メートルの地点で、雪が間欠泉のように吹き上がった。
 “敵”だ!
 ドカユキンは、足に装着したかんじきにかかる加重をコントロールし、跳んだ。
 振りかぶった右前足の爪は、“敵”を捉えていた。
 だがそれより速く、“敵”は動いていた。
 両目に各一本ずつ電線を接続された、全身をインディブルーのスーツに包んだ人間型サイボーグ、その名を「コードマン」と云う。
 デザインコンセプトから、その二体が同一の技術で造られた事は想像に難くない。
 一気に間合いを詰めたコードマンは、ドカユキンの爪を受け流し、バランスを崩したドカユキンを体落としで雪にめり込ませた。
「なぜ闘う! 俺たちは兄弟だ。」
 コードマンが言った。
「人間などを兄弟に持った覚えはない!」
 コードマンを突き飛ばすとドカユキンは起き上がり、咆哮の構えを取った。
「ウオオオオオオオオオオオオォォォォォォン!」
 咆哮は山全体を揺るがし、雪崩を起こした。

秋ノ月げん
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秋ノ月げん

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