綴られた言葉、少女の喜劇
拝啓、神様へ。
私をこの世界に生み出したことを恨みます。
いつまでもいつまでも恨みます。
そんな書き出しで始まる手紙を、書いては消して、消しては捨てていた。
私は、この世界に生まれたくなんてなかった。
それを母親のせいにしたくはなかった。父親のせいにもしたくなかった。
どうあがいても不幸にしかならない、自分のせいなのだと。日々、自分を呪っていた。
そんなある日、神様という存在を知った。
曰く、神は全能であると。
曰く、神は全知であると。
曰く、神は全てを生み出すと。
そう、知った。
それなら。
神様。私のことを知っていますか?
神様。私のことを助けられますか?
神様。何故私のことを生み出しのですか。
そんなことを問い続けていた。
いつか、なんとなく、だけれど。
「神の言葉」
が、聞こえてくるようになった。
人は、愚かであると。
神の創りしものではないと。
もはや、人は神の手を離れてしまった、と。
それからというもの、「神の言葉」は私の傍を離れることはなくなった。
毎日、一緒にいて。
ままごとや砂遊びに付き合ってくれるようになった。
実際にものは動いていないけれど、一緒にいてくれる友達がいるだけで私は嬉しかった。
なのに。
彼、が現れてから。
「神の言葉」は形を潜めた。
彼は、私の言葉を信じた。
彼は、私の行動を認めた。
彼は、私と一緒に遊んだ。
彼は、私と一緒に過ごした。
寂しくない、と言ったら嘘になる。
だけど、彼と一緒にいる時間はとても充実したものだった。
それが、一転する。
「神の言葉」は、私にシネと、言うようになった。
最初は意味が分からなかった。
何を言っているのか、わからなかった。
そのうち、それが死を命令するものだと理解した。
毎夜、その囁きは私のことを苦しめた。
星の綺麗な夜も、月の輝く夜も、雲で煙った夜も、ずっと囁かれていた。
私はその言葉に従わなければならない、と思った。
だから、彼に聞いたんだ。
「神の言葉を、あなたは信じる?」
ああ、神様。
私をこの世界に生み出したことを恨みます。
いつまでもいつまでも恨みます。
死ななくてはならないという必然を。
別れなくてはならないという必然を。
生きなくてはならないという必然を。
与えたことを、恨みます。
――――She knows God bless.