秋の運動会。
部活対抗の三人四脚。
直前にメンバーで揉めた。
「え?私?部員さんとじゃ歩幅が違うもん。部員さん同士の方がいいって。もしどうしても出ろって言うなら、誰かマネージャーと一緒に…っていうか、1年のマネージャー3人で丁度いいじゃん」
みやびが絶対嫌だと首を振る。
「ダメ。もう、部員の中で参加権賭けてジャンケン大会したから。で、出るのは俺と芝田に決定」
勇太が苦い顔で言う。
「え?」
「みやびちゃんが真ん中ね」
「ええっ」
「そりゃそうでしょ。何で俺と芝田が足を縛らなきゃいけないの」
「…」
出番が迫る。もう、これ以上話しても無駄だ。既に決定しているのだ。
みやびはため息をついて入場門へ向かった。
他の部はもう、準備万端で掛け声の練習をしている。
紐で足をくくる。
右に秀典、左に勇太。
みやびよりも頭一つ分高い2人。
みやびはそれぞれの顔を交互に見上げた。
ニコニコしている勇太に、仏頂面の秀典。嫌だったら出なきゃ良かったのに。ジャンケンなんかしなければ良かったのに。
みやびは頬を膨らませた。
こうなったら、とっととゴールして少しでも早くほどくしかない。
よーい
どんっ
事前に打ち合わせたとおり、みやびが大きな声で「1,2 1,2」と掛け声を掛けると、それに合わせて2人の男がリズミカルに足を動かす。
あら。
息ぴったり。
転んだり止まったりする他の部をしり目に、バスケ部は断トツの1位でゴールした。
「やったー!みやびちゃん、やったね!」
喜んで抱き着いてくる勇太。
「う…うん…よかったね」
その腕を引きはがすように体をくねらせていると、パッと足が自由になった。秀典が両足の紐をほどいてくれたのだ。
「あ、秀ちゃん…ありが…」
言い終わる前に、秀典はさっさと去って行った。
「ったく、愛想悪いよな。感じ悪い」
勇太は興味を失ったようにみやびの体を離した。こちらも去っていく。
「…」
みやびは1人残されて釈然としない思いだった。
「先輩、やりましたね!」
マネージャーの後輩が駆け寄ってくる。
「ありがと。私は2人に引きずられてただけだけどね」
「何か、2人の男に取り合われてるみたいでしたよ」
「そうそう。うらやましかったです~!」
「あ、そ。じゃ、来年はあなた達がやりなさい」
「で、先輩はどっちが好みなんですか?」
何でもないように問う後輩に、みやびは怖い顔で答えた。
「冗談でもそういう事言わないで。部内恋愛は禁止。わかってるでしょ?」
「はーい」
まったく…
みやびは気持ちを切り替えて、自分のクラスの応援席へと戻った。
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