さわぎごとの後
時計の針は、長い方が一、短い方は二を示した。
黒々しい闇から解放された館山の街には、ちゅんちゅんとつぶやく鳥、地を歩く犬や猫などの動物の鳴き声が戻った。
続くように、影すら感じられなかった街の各所に、人々の姿が戻ってきた。
どうやら、人々はハイドから逃れるため、建物の屋内、物陰などに避難し、隠れていたようだった。
城山公園にいた百合子は、紗香と再会を誓った後で別れた。
彼女は、目の前に見えるコバルトブルーの鏡ヶ浦の景色に心を惹かれながら、公園の坂道を下り、つきあたりにて右に曲がった県道を進み、かものようなゆっくりとした足どりで帰宅した。
紗香は、公園そばの停留所から館山駅行きのバスに乗って城山公園を離れ、横浜の白楽にある自宅に戻った。
また、この日におきた館山の出来事は、翌日以降、ニュース・インターネットにより報じられた。
新聞、テレビといった従来型のメディアとインターネットの電子ニュースのほか、個人アカウント型で最近流行のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)ツ・イーター、フェイスミーツなどのメディアにより、後々全国的に知られる出来事となった。