百合子の日課
日にちは進み、四月九日。
この日、百合子の通う学校、渡鍋学院中学校において新学期の始業式が執り行われることになった。
百合子は、いつものように時計の針が一二と四を指す時間に起床した。
「眠いけど、ランニングに行かなきゃ。」
百合子は、ベッドに寝かせていた自らの身体を起き上がらせてつぶやいた。
目についたやにを百合子は右の人さし指でやさしくこすり落とし、眠気を気にしながらジャージに着替えた。
ジャージ姿の百合子は、後ろの長髪を馬の尻尾のように束ね、首にスポーツタオルを巻いた出で立ちで自宅をたち、目的地の館山駅東口を目指した。
彼女は、自宅前の小路を通りすぎ、商店街のつらなる国道を走っていた。
辺りは、まだ暗い闇に包まれていて、空には乳白色の雲が漂っていた。
その雲の合間からは、井戸の底から覗いたかのように星が輝き、視点を東に移すと、お日様の淡い光を見ることができた。
「いつも思うけど、星空や太陽が昇ろうとしているロケーションの下で走れるのは、とても幸せなことだわ。」
百合子は足を走らせている状況下、すばらしき景色を眺めて感心した。
「もう少しで駅だから、頑張ろう!!」
その景色に、百合子は癒されたのか、うきうきとした表情で足や腕をおもいっきり振らせ走っていた。
百合子は、この後、引き続き商店街の立ち並ぶ国道ぞいに足を走らせ、時計の針が四を少し過ぎ、六を示す時間にヨーロピアンなスタイルが漂う館山駅東口に到着した。
彼女は、休む様子もなくすぐさま折り返した。
百合子は来たみちを戻り、時計の針が一二と五を指す時間に帰宅した。