以来、家族で旅行することはなくなった。
また、私も受験を控え、そんな余裕もなくなって来ていたし。
お兄ちゃんに至っては、一浪しちゃったし。
お父さんとお母さんたまに出かけている見たいだけど。
ただ気になるのが、あの祠だ。
一体何が祀られていたのか。それは今でも分からない。
お兄ちゃんが不思議な体験をしたとかほざいていたが、どこまで本当なのか。
でも。
誰もいないはずの廊下が鳴り、ドアを掻きむしったと聞かされて、何となく納得した。
供えてあったお花を祠ごと土砂に埋めたのは私とお兄ちゃんだ。
あの祠の人(?)が何かを伝えに来たのかも知れない。もしかしたら怒っていたのかも。
よく考えると恐怖体験そのものだが、私は寝ていたから覚えていない。
ただ。
最後の家族旅行にしては上出来だったと思う。
自然の、あるがままの姿の滝。
正直、圧倒された。本物だとも思った。
そして、良く言えば趣のある古びた温泉宿。
お酒を呑めなかったのは残念だけど、まぁそれは仕方がない。
お兄ちゃんの恐怖体験(?)も、きっといい思い出になるだろうし。
そして私は、受験が終わったら、そして希望する大学に合格したら、友人達と合格旅行に行く。
もちろん『あの旅館』に。やり残した事があるからだ。
友達に滝を見せてあげたいし、自販機の件もある。
そして祠を掘り起こして、無事合格した事を報告する予定だ。
なぜかそうしなければならない、そんな気がしたから。
了
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