ライ・ディスカバリーの脅威

 僕の彼女は一歳年上で、家庭的でプロレスが大好きな女性だ。時々プロレス技をかけてくる以外には何の不満もない。
 そんな我々に危機がやって来たのは二週間前。
 彼女は僕に浮気をしているのだろうと迫った。
「浮気ぃ!?」
 僕は仰天した。世界広しといえど僕のようなシケた男を選ぶのは君だけだよ、と言いそうになったが抑えた。
「そうよっ。アタシ見たんだから! 大学のカフェテリアで女の子と話してたっ!」
 あれか、と僕は彼女が言う『女の子』に思い当たった。
 けれどそれは浮気ではない。その女の子は僕と同じ研究室の娘で、ただ偶然会って軽く言葉を交わしただけである。
 そう弁明すると、彼女はそれを受け入れた。彼女の眼前に踊るホロウインドウには『真』と表示されているのだろう。
「僕が浮気なんかするわけないだろ」
「それもそうね。でもさ、どうしてほかの女なんか見るのよ。アタシのほうがずっと可愛いでしょ?」
 僕は押し黙った。下手に何かを言っても、僕が嘘をついていることは彼女に筒抜けである。
「ふーん、そこで黙っちゃうんだ」
 正直に言ってしまうとゼミの女の子のほうが可愛いのだ。『でも人間顔が全てではないんだヨ』と言えるほど僕はまだ達観していない。よってここは黙るしかないのだ。
 けれど沈黙は嘘と同義。
 その数秒後、僕は彼女に強烈なアキレス腱固めをキメられていたのだった。
 それもこれも『ライ・ディスカバリー』のせいである。

カカオ00
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カカオ00

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