第4話 襲撃と儀式を
「心の準備はいいかい?」
「はい」
「宜しい。では儀式を始めよう」
食後、国の所有する家の一室で儀式が行われていた。
死者と数分だけ会話が可能という、並の魔法師では考えられない規格外の儀式だ。
魔法と違う点は、魔力を消費しないこと。
周囲に漂う魔素をエネルギー源とし発動する。
ジェネクスさんはボクの髪の毛を入れた香をたき、部屋を煙で一杯にした。
吸っても呼吸に問題はないので、有害ではないのだろう。
視界が少し悪くなるだけだ。
「よし、箱を開けてくれ。それで儀式は完成する」
部屋の中央に置かれた四角い箱。
そこには煙が寄りついていない。
ボクが箱の前まで進み、箱の上部の取っ手を掴み、持ち上げる。
部屋の煙が全て箱に吸い込まれ、煙が形を成していく。
それは人の形になり、細やかな部分が形作られ、最終的にそれは人となった。
「かあ……さん?」
それはジェネクスにとって予想外の出来事だった。
終わったと思われた煙の変形が、終わらない。
みるみる異形の化物へと変貌を遂げた灰色の煙には、生前の色がついた。質感も、外観も、本物《・・》。
――蘇ったのだ。
『キリュリリリリリリリィィィ!!』
「セクター君! そいつは生きているっ!」
「え?」
目玉が四つ。
腕は八本。
色は緑。
堅そうな甲殻に覆われた体を持ち、蜘蛛のような容(かたち)をしたそれは、ジェネクスの記憶によるとこう呼称されている。
《魔獣》と。
それは突然の出来事。
眼の前に居たセクターに襲い掛かる魔獣。
そして天井を突き破って落下してきた襲撃者。
襲撃者は十数名。顔の下半分を布で覆っていて、顔は確認できない。
ジェネクスはどちらから対応するか迷うが、現在進行で襲われているセクターを助けるべく魔法を放とうとして気づいた。
『魔素』がここには無い。儀式に持っていかれている。
――打つ手なし……か?
そうジェネクスが考えた時には遅かった。
魔獣の腕が鎌のような形状を成して、閃いた。
刹那、閃光、瞬時とも云えるその瞬間ジェネクスがとった行動は『助ける』だった。
その方法は、|身を挺して《・・・・・》。
「ぐっ、うう……」
「ジェッ…………」
セクターは叫んだ。
喉が裂けそうなほど、狂いそうなほど、両親が死んだときでもこうまでにはならなかったほどに。
大量に出血しているジェネクスさんを見下ろして、蹲って、ただ叫んだ。
「……ジェネクスさあぁん!」
セクターのを取り囲み、魔獣を倒した複数の襲撃者たちは縄を持ってじりじりと近づいていた。
もう逃げ場はないぞといわんばかりに、襲撃者たちの目は勝ち誇っていた。
泣いている一人の少年を縛る。
抵抗もせず、ただただ泣き続けるだけだ。
簡単な仕事だったなと、心の中で嗤っていたその時。
「私の弟子《・・》をどうするつもりだ? 賊よ」
大魔法師が――立ち上がった。