プロローグ
(楽で時給のいいところってなかなかないのよね…)
あたしの名は片桐千歳19歳。もうすぐ大学2年生になる。彼氏いない歴ほにゃにゃら。昔は女優とか歌手とかに似てるとか言われたこともあるけど今はそんな面影はない。両親からそれなりのお小遣いで交際費のみのやりとりですんだのだが、家から大学まで片道1時間はやはりきつい。1人暮らししたいものの、「家事なんかできないでしょ」とお母さんに言われれば、「いいけど全部自分で支払いしろよ」とお父さんに言われる始末。
せめて家賃だけはお願いしますと頼み込んだこともあって、家賃以外の出費をまかなえるだけのアルバイトをしなければならないのだ。電気、ガス、水道、携帯、交通費、交際費、あと食費、化粧代など計算したらいくら必要なんだろうと考える。
あたしは大学の帰りにコンビニに寄ってはアルバイトの情報誌を買っては、地下鉄にてなんとか座ることができて読むことにしたのだ。
(出来れば最低賃金のところは嫌だなあ)
と、そんなことを考えつつも新居はどこらへんにしようとか、立地条件も考えたりすると悩むばかりである。
一旦雑誌をとじて目を上にむけると、少し年上くらいだろうか? 茶髪でいかにも化粧に時間かけまくっていますといった女性があたしの前に立っていた。
(香水きつっ)
と、不快感をできるだけ顔に出さないようにしていたのだが、まさかこの出会いが運命を変えることになろうとは思いもしなかった。