1話 01
ーー学校というのはやめることのできない監獄だ。
強者のみが権力を握り、そのグループに属せない少数の人間は腫れ物のように扱われ、強者からのいじめに耐えるしかなく、残りの大半は「あぁならなくて、よかった」と他人事のように笑ってみてるだけだ。
昼休みになると、僕は屋上にいる不良達の昼飯を届けることが日課になっている。無論、不良達は僕に一円足りとも出すことはなく、全て僕の自腹だ。
僕だって、本当はこんな奴らの言うことなんか聞かずに先生に言ったりして、何かしらの抵抗をしたいと思っている。
けれど ーー志乃だけには今の自分を知られたくはない。
だから、僕はこの不良達とある約束をした。
ーー志乃を悲しませたくはないから、志乃の前ではいじめないでほしい。
これが僕の心からの願いで、今では何もかも駄目になってしまった僕ができる最良の選択だった。
「佐々木君、いつもの持ってきたよ」
「瀬崎遅かったな。まさか、先公にチクったんじゃねーよな?」
「まさか……。僕はそんなことしないよ」
僕は必死の思いで愛想笑いをして、その場を切り抜けようとした。内心はどこでも良いから、一発殴ってやりたかったけど、僕にはそんな勇気は欠片もなかった。
「お前、気持ち悪い笑い方しかできねーのかよ。飯がまずくなっちまうだろうが」
腹部に鈍い痛みが走り、同時に込み上げてきた胃液にむせてその場にうずくまってしまった。
「おい、こいつ吐いてるぜ。汚ねーな。おい、みんな別の場所で食おうぜ」
不良達はうずくまっている僕に足蹴りを何度かすると、その場から去っていった。
僕は恐る恐る目を開けると、アスファルトには小さな水溜りができていた。
重たい体をなんとか起こし、空を見上げた僕は素朴な疑問を口にした。
「空はこんなに晴れているのにおかしいなぁ……」
ーー僕は今の自分が最高に大嫌いです。