2話 02
僕は必死に走りながら、状況を整理することにした。
フィールドは高層ビル群が立ち並び、射撃性能のある武器が圧倒的に有利で、なおかつ見晴らしの良い晴天。
そして、敵の武器はその高層ビルを貫通する程の熱量を持った光ーービームを放出する兵器を持っている。
一番不思議なことは障害物があるのに、敵は正確に自分を狙撃してきたこと。
それに比べて自分は右手の半分を失い、ゲームのルールさえ分からず、
武器はーー素手だけという絶望的な状況で勝ち目はもう無いに等しいかもしれない。
けれど、僕は自然と負ける気がしなかったーーむしろ、自分の思い通りに体が動いたことに心の底から感嘆していた。
なぜなら、あのビーム攻撃に気づいて結果が出るまでの僅かな時間で、
僕は右手の半分を失う程度で済んだことが今でも信じられないでいるからだ。
今までの僕なら、あのビームに気づいたとしても、体は何も動けずに全身を焼かれていただろう。
でも、この世界においての僕の分身である体は思いのままに動き、一命を取り留めることができた。
しかし、この余韻に浸る時間もなく、また圧倒的に不利な状況は変わらない。
それに、まちのあちこちにあるディスプレイにはーーーー
「362/777」
制限時間でだろう数字が、残りを半分を過ぎていた。
それと、その下のゲージの七割方は相手の方にあり、自分は敵にそれだけ不利なことを一目で教えてくれた。
幸い、敵の攻撃がないことから敵は連続で攻撃できないことが唯一の救いだが、それも時間の問題だろう。
「武器を探さないとな」
と、僕は呟きーー再び考えーーそして、一つの結論を導き出す。
フィールドを移動している際に何度か目にした黒い謎の箱。
ーーきっとあれの中身が武器で、願望戦争の勝敗を大きく支配するのだろう。
そう考察した僕は期待と不安が入り混じる感情を必死に抑え、近くに落ちている謎の黒い箱を手に取ることにした。
箱は眩い翡翠色の光を放ちーーーはしたが、何も変わらない黒い箱のままだった。
眩い光のせいなのか、または何か特別な道具か武器かはわからないが、正確で無慈悲なビーム攻撃が僕に目掛けて飛んできた。
先ほどまでの僕とは違い、障害物からの攻撃でも反応ができ、それを左に避けることで回避ができた。
「なんだ? アニムズを使わずにアバターだけで戦おうってか? 俺も舐められたもんだな」
「アニムズってなんだよ?! それにどうしてお前だけ武器を持っている?
僕は何もわからないんだ。頼む、説明してくれ!!」
僕に話し掛けてきた金髪のピアス男は口角を尖らせ、高笑いをして、
「こいつは良いーールールも何も知らないとはな。
お前にはΩオプションの犠牲になってもらうぜ!!」
ーーΩオプションって、なんだ?
訳の分からない単語を発したピアスの男が担いでいたバズーカは大気を吸い、遠くからでも見てわかるくらいの殺気を帯びていた。
分からないことだらけで、何をすればいいかが全く分からないがただ一つ分かることが一つだけある。
ーーこの攻撃をくらったら、僕は負ける。
それだけは、ルール説明を受けなくても用意に理解できた。