2話 01

「じゃあ、さっそく連れてってやるから、目閉じな」
「連れてってやるよって……。どうやって行くんだよ」



 僕は普通の中学生で、こいつは謎の生命体だが、異世界に行ける車を所有してる程凄そうな奴には思えない。

 だが、他に方法もないので、目を閉じることにした。



 ーーけれど、目を閉じた瞬間に違いはすぐにわかった。



 僕の心情とは対照的な雲一つないくらい晴れきった晴天と巨大な建物がひしめき合う高層ビル群ーーーー


 何より一番不思議なのは風を感じる感覚や皮膚に伝わる温度は一切ないのに、顔以外の全身に施された黒鉄色のスーツが自分と完全に同化しきった独特な感覚。



 ーー例えるなら、体性感覚がなくなったというより、ゲームの中に入ったというのが、正しいかもしれない。



 唯一、自分の溝内辺りにある水晶石に似た石以外、特別な武装もない。

 そして、冷静になった自分の頭が再び思考を開始した最初の言葉はーーーー



「なんなんだよ、これ!? 元の世界に返してくれよ!!」
「何、言ってんだ? 願望戦争はもう始まってんだぜ」
「はっ?! 相手はどこにいるんだよ? それに僕の武装はどこにあるんだよ」



 そうだ。戦うにしろ防具があっても武装がないなら素手で戦うしかない。

 って、こんな訳のわからない状況になっても、どうして僕は戦おうとしているんだ。

 混乱した僕の考えを遮るかのように、キューブは妙に腹の立つ笑みを浮かべ、



「お前、ルール説明聞かなかったよな?」
「だから、僕が聞かなかったから、教えないっていうのか?」
「あぁ、教えねーよ。戦いはフェアじゃねーとな」



 ーー何がフェアだ。



 武装がない状態で近接武器や火器を持った敵と、どう戦えっていうんだ。

 待てよ……。武装が最初からないのなら、相手も武装はないのではないか。

 ならば、お互い素手で戦う近接戦闘か。または別のゲーム。

 ならーー鬼ごっこか、かくれんぼが妥当な所だろう。



「鬼ごっこか、かくれんぼかわからないけど、とにかく隠れないと」



 僕は歩いて、近くの建物内に隠れようとしたが、中にはどうやっても入ることはできない。



「ハリボテなのか、これ?」



 実に紛らわしい。早く別の隠れられる場所を探さないと思い、

 右側に移動しようとした僕の目の前を、熱量を持った光が通り過ぎるのを目の当たりにした。

 そして、右腕の肘から上の部分は消失していた。



「ちっ、狙いが逸れたか。次は外さねー」



 ーーどうやら僕は、本当に戦わなくてはならないようだ。

真口 祐輔
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真口 祐輔

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