プロローグ

 日の光が、さんさんと降り注ぐ真昼。ここは、レンガが一面に敷かれた小さな市街地。
 この街には、陸から、あるいは海から、多彩な人物がここに訪れるため、小さいながらも、大通りを中心に大きなにぎわいをみせている。
 「この果実、いい香りがいたしますわね」
「お姉さんお目が高い! これは今が食べごろだよ! 食後のデザートにいかがかな?」
「……そうね。じゃあこの食べごろの果実を、昼と、夜の分、いただこうかしら」
「まいどありー! せっかくだからお姉さん、これも一個おまけ!」
「あら、うれしいですわ」
 このように、訪れた人々は、露店で売られている食材を手にとっては、気に入ったものを買って、また人通りを歩いてゆく。この街では、日の光と海の香りを受ける様々な食材が、あらゆる場所で売られているのだ。
 「すいませーん」
 そんなところに、少々お腹がふくれている少年が一人。
 「やあいらっしゃい! 今日は何が足りなくなったんだ?」
「……それ二〇個と、あれ三玉。あと、この果物を五個下さいー」
「ほうほう。フート君、今日も盛況みたいだね!」
「はいー」
「頑張れよ! 昼飯の時間はこっからが勝負どころだからな――はいよ!」
「いつも助かりますー」
 いくつかの農作物をたんまり詰め込んだ紙袋を、少年――フート――は両腕とふくれたお腹で支え、足早に人混みへまぎれこんでいった……。
 「フート」という少年が、喧騒な大通りをしばらく歩いていると、先の一角で行列ができているところを発見した。フートはそれを見てふう、と息を漏らすと、紙袋を抱え直し、行列をたどる。
 列の先に胸を躍らせる人々を横目に、フートは一点を捉えて歩いていた。フートが見つめる先には、静かな裏路地であるにも関わらず、大通り並の賑わいをみせる軒があった。この軒が、彼の目的地である。
 「さてー。お仕事頑張ろー」
 つぶやいたフートは行列に背を向け、軒の裏へ進むのだった。

KayaPasse
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KayaPasse

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