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 ーー目が覚めた。

 と、表現するのが本来正しいのかさえも疑うくらいに、今の俺は自分の置かれている状況を全く飲み込めていなかった。

 俺はーーあのパンダの被り物をしていた万代という男に、心臓を至近距離から拳銃で撃ち抜かれた。

 地球上に存在する大半の生命体なら絶命している程の致命傷を喰らったはずなのにーー異常と言えば、寒空の中で寝てしまった為に起こった体の冷えと、左胸の部分が破れてしまったブレザーの制服に、接着剤のようにへばりついている自分の血だけだった。

 それに、普段なら倦怠感で満ち溢れているはずの体は軽く、視界や聴覚は今までに比べクリアになり、体の奥底から力が込上げてくる奇妙な感覚だった。

「死んで生き返ったら強くなるとか……どこの漫画の主人公なんだよ」

 余りにも現実味がない今の状況を説明するには、七つに煌めく不思議な玉のせいだとしか説明できない自分の語彙力の無さを痛感した。

 今になって気づいたことと言えば、凛花から託されていた拳銃入りのハードケースはなくーー拳銃は、あのパンダの被り物をした男に奪われたという、絶望的な事実だった。

 拳銃を奪われたという事実を知らせる為にーー俺は左のポケットに入れていた自分の携帯電話を徐に取り出すことにした。

 携帯電話に表示されている着信履歴は三十件以上あり、その全てが凛花だったが為にーー俺から電話をすることに戸惑いを感じながらも、渋々電話をかけることにした。

「那由多!! あんた、何してんのよ?!」
「信じて貰えないかもしれんが、パンダの被り物した奴に拳銃で撃ち殺されて、ついさっき生き返ったんだよ。それで、拳銃も奪われた」
「はぁ??? こんな非常事態に何言ってんの?! まさか、家に帰ってないとか言わないでよね」
「ついさっきまで、死んでた人間が家路に着いてるわけねーだろ」

 走り続けていたのか。凛花の荒い呼吸音が聞こえーー大きな溜息の後に、

「とにかく!! あんたは今すぐ大城駅近くの工事現場に来なさい。場所は八田」

 場所を知らせようとしていた凛花の声が止まり、電話からは排気口の噴射音と機械の断続的な騒音のみが聞こえていた。

 そして、耳には響く、キーンとした静寂の後にーーーー

「なんで、志奈がーーーー」

 そこで電話は途絶え、話中音が規則的に続いていただけだった。

真口 祐輔
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真口 祐輔

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