後半

おはよう。
おはようございます。

丁度、おじいさんと角で一緒になると、並列して歩く。

なんとなく気まずい。

おじいさんが口を開いた。

あれなの?皆、自転車じゃないの。

そう、ですね。

○○高校だろ?あなたは自転車じゃないの?

歩きなんですよ。

おじいさんは、せかせかと歩く。
私は歩調を合わせて右側を歩く。

去年まであったバス、なくなっちゃったんです。

あなた一年生じゃないの?

三年です

ああ、そうなの

こくこくとおじいさんは頷く。

時計を見る。

八時五分。



バスって?市営バスかい

あ、いや 去年までは学校からでてたんです。

そうなんかい
ふーん……

じゃあ何、どの辺から来てるん?

互いに淡々と言葉を交わす。
歩調は変わらない。

あなた部活は何してんの

あ、きた。この質問。
頭の中で微ピンチ。
漫画研究部である。年代的に伝わらない部活ランキング上位に軽く入るんじゃないだろうか。

なんか運動してんの?

文化部なんです。

よく聞こえなかったらしい、
帰宅部?運動してないんかい?しないとだめだよ〜

優しく、おじいさんがそう言う。

まあ…帰宅部でもいいか。
一応部長は、諦める。

時計を見る。

八時十分。



おじいさん、いくつに見える?

学校への曲がり角に近づいてきて、おじいさんが問う。

うーん?
(六十代?七十はいってるかな)

八十一歳!

えっ

おじいさんは誇らしげ。
歩調はそのまま。

すごいですね。

そこらの、腰の曲がった六十、七十よりは元気だよ

聞いた話によるとおじいさんは、十キロコースを散歩中らしい。

曲がり角が来た。
すごいおじいさんは、真っ直ぐ行くようだ。

別れ際におじいさんが振り向く。
頑張れよ。運動もちゃんとな

はい…!

お気を付けて…は、変か。
お元気で…も、おかしいな。
と一言を考えているうちにおじいさんは行ってしまった。

時計を見る。

八時十二分。



ようやく学校に着く。

おはようと交わしながら、一番前の右端の席にカバンを置く。

目の前の壁のちょうど上にかかっている時計を見上げた。

八時十五分。

腕時計を見る。

八時十五分。

あれ。

教室の時計も遅れてんじゃん。


おはよー

斜め後ろの席の子がきた。

おはよー

今日の宿題ってさー

いつもの会話が始まる。

いつもの一日が始まる。

同じ景色なようで、そうでもないようで

そのいつもが、過ぎていく。



机の上を見る。

開かれた教科書。

いつもの定期考査の勉強をほったらかして、またスマホに目を移すと、私はこうして文字を打つ。

「not always…(いつも…とは限らない)」

教科書が言っている。

いつも…とは限らない。

そういうもの?

そういうものなんだろう

いつも英語に限ってはいい点を取れる…といえば取れるとして

いつも…とは限らない。

教科書に目を落とす。
ぼうっと、こんなことを考えながら。

時計を見る。

七時七分。

いつもが過ぎていく。

いつものように、私はテスト(前だけ)勉強を始める。

何気なく、いつものように。

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