──回想──
◆ ◆ ◆
カンバスに絵の具を垂らしたような、晴れ晴れとした真っ青な空の下。
地平線の彼方まで広がる草原が、時折吹く風でそよそよと揺れる。
少年が天を仰ぐ隣で、瑠璃色の髪の少女は、腰を下ろしてまっすぐ前を見つめている。
「ねぇ、リンドウ。あたしのこと好き?」
「……………」
「リンドウ、聞いてる?」
「ん?」
「もうっ。ちゃんと聞いてよね!」
聞こえているさ、と燐慟は内心ほくそ笑む。
困ったときに時雨が浮かべる、その表情が燐慟は好きだった。
頬を膨らませ、眉間にシワを寄せてそっぽを向く時雨。
それでも彼女の名前を呼べば、ヒマワリのような笑顔で抱きついてきた。
「あたしたち、大人になったら結婚しようね」
これは、時雨の口癖で、俺たち二人の誓いのようなものだった。
当時六歳だった俺は、家柄のことはあまり判らなかったが、神咲家と榊家は五指に入る名家で、俺たちが結婚すれば互いの家の繁栄にも繋がることは、父から何度も聞かされていた。
だがそれ以上に、俺は時雨のことが好きだった。
何の困難もなく、その夢はすぐに叶うと思っていた。
ただ、本当に時雨が好きだった。
それなのに、大好きでたまらなかったのに、時雨は死んだ。
いや、正確には──俺が殺したんだ ──