◆ ◆ ◆


「──、い………──リン……、リンドウ」


誰かの呼びかけで、思考世界から引きずり出される。

気がつけば、目の前を掌がヒラヒラと上下していた。



「聞いてる?」

「……時雨がなんで………」


──生きている?



と聞こうとして口を開き、少しの浚巡(しゅんじゅん)の後、喉元まで込み上げていた塊を嚥下(えんげ)した。
残ったため息だけが吐き出される。



「……別に」


とだけ告げれば、案の定、蓮は眉ねにシワを寄せる。


「は? なんだよ、それ。今、何か言いかけてただろ」


「別にって言っ──」


「言えよ」



ほんのかすかに殺気を纏った言葉が、飛んでくる。

一発触発の危機を秘めて、火花を散らす碧眼と琥珀色の眼。

凍りつくような沈黙が、二人の間に鎮座する。



「……まぁ、いいけどね別に。今は僕の婚約者だから」


またもや、蓮の言葉に反応してしまう。
蓮に強い視線を向けてしまった後で、にやりと蓮が口のはしをつり上げ、



「ほら、隠しきれてないってば」


と、笑う。
キッ、と鋭い眼差しを蓮に向ければ、彼は見下すような冷笑を浮かべ、こう言う。


「時雨の何を知ってるか判らないけど、僕らが知らない何か重要な情報をリンドウが持っているなら、家の者がお前を連行して、拷問にかけるかもしれないよ?」

「…………」

「なんなら、僕が言いつけてやろうか?」


彼の目に、嘲るような光が漂う。
そんな蓮を燐慟はただ見つめ、億劫げに息を吐き出した。


「………お前、本っ当に面倒くせェヤツだな」

「あ、やっと喋った」

「うるせェ、話しかけんな」

「えー、いいのかなぁ、神咲に逆らっても。 父上に報告してもいいの?」

「………何が目的だ」



その言葉を待ってたと言わんばかりに、嬉しそうに顔を輝かせ、息を弾ませる。


「友達になろう」


唖然として、まじまじと蓮の顔を見つめてしまう。


「…………………は?」

「だから、僕と友達になろう」

「………てめェ、ふざ けてんのか」

自分でも驚くくらいの低い声が、口から発せられた。

声が怒りに震えるのを、抑えきれない。抑えられるはずがない。

壮佳
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壮佳

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