「君、猫かぶってるでしょ。バレバレなんだけど」


スッと細目られる二つの瞳。放たれる眼光は、触れたら怪我をしてしまいそうなほどに鋭い。



「何か、色々企んでたりして」



いきなり核心をついてきた蓮。だが、ここでボロを出すわけにもいかず、燐慟もほんの少しだけ反撃に出る。



「猫をかぶる? そんな必要がどこに──」

「いやいや、ありまくりでしょ。何せここは、神咲直轄の超エリート学園。神咲の息のかかった者しかいないんだから」



あいも変わらぬ人当たりの良さそうな笑顔を貼り付けて、蓮は言う。



「言うなれば、君は敵陣にたった一人で迷い込んだ野良犬、ってとこかな?」



子供騙しの嘘などではない。彼は──神咲 蓮は完全に確信している。
これ以上何を言っても、無駄だと判断した燐慟は、長く尾を引く白いため息を吐き出すと、眉根にシワを寄せて窓の外に目をやった。



「お前、めんどくせェな」



すると、途端に目を輝かせた蓮。



「お、敬語やめてくれるんだ」



声を弾ませて、蓮がこちらを見る。やはり、ニコニコと楽しそうに笑っていた。



「うるさい。俺は、めんどくさいヤツ大嫌いなんだよ」

「えぇー、めんどくさいヤツって僕?」

「お前以外にいないだろ」



すると、蓮はまたくすくすと笑い声を洩らす。



「それじゃあ、明日からの実力試験でも本気見せてくれるよね」

壮佳
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