プロローグ
人は死ぬことをためらう生き物。否、人でなくとも死は怖いのか。不死身に憧れるならやめたほうが良い。きっと、後悔することになる。
青い空と照り付ける日差しの下、一機の飛行機が東京国際空港に着陸した。
「ここが日本……」
飛行機から降りた一人の少女は呟いた。彼女の名前はマルシェ。
彼女は東洋の島国の地を初めて踏んだ。
空港内は実に賑やかだった。日本語の下に英語や中国語が書かれている看板。
ロビーには英語で書かれた『ようこそ日本へ』、ローマ字の『おもてなし』といった横断幕。今まで嗅いだことのない和食の匂いが鼻をくすぐり、空っぽのお腹がグーと鳴る。恥ずかしくなって周りを見るが誰も気に留めていないようだ。
(お腹減ったな)
マルシェは和食店に入り、お寿司をたらふく食べた。
「うー……」
和食店から出たマルシェはお腹をさすりながら、不慣れな日本語の看板を頼りに空港の総合案内を目指す。
「と、とうきょう? じゃない……きょうと? に行くにはどうすれば――」
空港の総合案内の女性に不慣れな日本語で尋ねる。
笑顔で対応してくれた受付の女性に感謝を述べながら、マルシェは東京駅に向かった。