第1話「鳥籠」
あれから数年が経ち、俺は高校二年生になった。
あの事件から一度も加奈ちゃんのことを忘れたことは無い、それどころか会いたいと強く思うようになった。
今更許してもらおうとは思っていない、でも謝りたいのだ。
「よし、荷物はこんなもんだろ」
大きめのカバンに女物の服などを入れ俺は足早に家を後にした。
決して泥棒をしている訳ではない、一昨日母さんが職場で倒れてしまった。
別に大した病気ではない働きすぎによる軽度の過労らしい、医者からは2、3日の入院を勧めた。
後から母さんの携帯のメールで知った俺は学校終わりにそのまま病院へと向かった。ここから30分くらい歩いた場所にあるそこそこ大きい総合病院だ。
スライド式の扉をゆっくりと開ける、そこには数人の患者が入院していた。その中から母さんを見つけると俺は他のお見舞いの人に軽くお辞儀をしながら向かった。
「母さん調子はどう?」
見た目からは特に顔色も良く病人には見えなかった。
「心配させてごめんね、もう大丈夫だから」
背負っていたリュックを棚に置き備え付けのパイプ椅子に座った。
それから数十分の間母さんと話をしていた。
「ごめん、ちょっと飲み物買ってくる」
そう言うと俺は部屋を後にして自動販売機を探しに行った。
「あったあった」
意外と遠くにあった販売機で俺はコーヒー牛乳を購入した。
自動販売機から取り出しさっさと戻ろうと来た道を進んだ。
「ん?」
振り返った時、一瞬だが人影を見たような気がした。
別に気にすることもなかった。しかしなぜか気になってしまった俺は人影が消えた道へと向かった。
そこは階を上り下りする階段だった。さっきの人影はと上を見渡すと同じ人影を見かけたので俺は少し早目に階段を上った。
それから何度も人影が見えてはそこに向かっていた。まるで俺を招いているかのように……。
人影が見えなくなるとそこは母さんがいた階から3階上の階で個人病室がある階だった。
そして俺は今、ある病室の扉の前に立っていた。人影がこの辺りで見失ったからだ。
「……開けて大丈夫なのか?」
周りには誰もいない、当然どこからも返答は返ってこなかった。
俺は恐る恐るドアの取っ手に手を掛けゆっくりとドアをスライドさせた。
そこはとても広く手前にはソファとテーブルが設置されておりまるでお金持ちが入るような病室だった。
俺は病室に足を踏み入れ奥にあるベッドへと向かった。
「おい、嘘だろ……」
俺は驚いて後ずさりした。ベッドに寝ていたのは数年前に教室から飛び降りた加奈ちゃんだった。
「そんな、加奈ちゃんは遠くの病院に入院しているんじゃ……」
そういえば加奈ちゃんのおじさんは別に遠くの病院なんて一言も言っていなかった。それはただの俺の思い過ごしだったようだ。
「加奈ちゃん俺は君を守ってあげられなかった……ごめん……」
俺はベッドのそばで膝をついて加奈ちゃんの手に触れた。その時だった。
俺はひどい睡魔に襲われた。必死に抵抗したが体が思うように動かずそのまま眠ってしまった。