そして、そのやり取りの前後から両者共無く連絡は皆無。気不味い関係の侭今日に至る……。しかし如何ともし難く、最近の僕は閑談や社交に費やすだけの気力が欠乏している。
それ以上に、外部の生活へ対する現実感すら希薄なのだ。いつから自分がこんな風に無気力な精神状態へ減退して行ったのか、その記憶もまた泡沫の夢の様に朧気なのだが……。
今の僕には実生活の中で、視界に在る物全てが演劇上の書割りの様に見えて来てしまう。
―例えば<都心>―。
そこは正しく人間の坩堝だ。栄耀たる都心部に犇く、市民達の殷々とした様相……。最近の僕は、そんな殷盛を極める街中を往来する中で、平静を装いながら不意に狂騒に襲われる時が在る。
……大勢の人間の中で、自分だけが片隅に追い遣られて行く様な孤独感、自分の真の居場所はここでは無い筈だ、と言う違和……。
日増しにそれ等の不一致は肥大して行くのだ、想い想いに行き交う群集と。
皆、権謀者達に拠って形成された既存の社会に、何の葛藤も無く適応して今この場所を歩いているのか? 彼等は何処から来て何処へ行くのか? 僕の内面等は孤独や無力感以上に、根底に在る生存動機すら危ういと言うのに。その疑念は荒波の渦中で転覆し掛けている小船の様に、不安定に振幅し続けていると言うのに……。易々と社会へ適合している模範市民からすれば、僕の観念等余りにも青臭いと哄笑されるかも知れない。だがそれでも、僕の内心の煩悶は木霊するばかりだ……。
<自分とは何か?>
<自分の生存理由とは?>
<自分の生存価値とは?>
―例えば<学校>―。
一般的な若者として、ご多分に漏れず僕も学業に不熱心ではある。事務的に教鞭を執る教師達の退屈な講義を日々受講する度、何とまあ通り一遍でティッシュ一枚の様に浅薄な教示だ、と欠伸を噛み殺しているものだ。
しかし僕に取って、反感の対象は既に枯渇した様な大人達ばかりでは無い……。僕を取り巻く級友達の日常も叉単調極まりないからだ。大抵の生徒は受講だけを反復する変わり映えの無い毎日で人生を浪費し、確固たる夢も持たない。只学校と言う小規模な社会に於いて、規範から逸脱しない様に、周囲の人間から忌避されない様にと細心を砕く。
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