「『宿題を提出期限迄に仕上げたい』『宿題をどうこなせば良いか解らない』『宿題で良い点数や評価を取りたい』……。そんな悩みを我々代行サービス会社が全て解決致します! 是非当社へご相談を!!」
この様に、切迫した家庭へ救いの手を差し伸べると請け負う煌びやかな広告の文言は街中やメディア上で過当競争の如き様相を見せながら氾濫している。
しかし、飛躍する代行業者サービスの是非を巡って激論が戦わされている事もまた確かだった。
曰く、「金権に頼れば良いと言う歪曲した価値観を植え付けてしまう」「学力低下の要因に成り得る」「子供達の経験を奪い誤魔化す事になってしまう。自分でやるべき宿題を業者に丸投げして、子供は一体何を学ぶのか」
そんな金銭や代行業者の力で解決する他力本願な姿勢、自主性の芽が摘まれてしまう危険性が指摘され、旧来的な教育観を持った大人達からは矢張り難色を示されているのだ。
……だが、正直に告白するとプロの業者として活動する僕は世間の指弾を浴び様と一向に意に介する所は無い。教育評論家は「モラルの低下振りが世も末だ」と訳知り顔で首を大袈裟に振り、「近代テクノロジーの発展に於ける弊害」と言った陳腐な形容を持ち出して慨嘆するのだろう。
只、貴方の学生時代にも身に覚えは無いだろうか? 提出期限が間近に迫った宿題を優等生へ必死に頼み込んで丸写しさせて貰う、試験範囲から出題の傾向を冗談半分に近付きつつ教師から事前に訊き出す、手近な物に重要な単語や計算式を書き留めカンニング紛いの行為をする……。
自分自身の体験では無いかも知れないが、少なくともそんな風に姑息な態度で学生生活を凌いで世渡りしている学生達の姿等、日常的風景では無かったか。
他人の知恵や得意分野を借りる……。人脈を拡げて物事の効率を上げる……。自分の短所や苦手分野、限界を見極める……。
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