現実を知悉しそんな処世術を身に付ける事も、学校生活や教育に於ける裏面だと個人的には捉えている。代行サービスと銘打っていても本質的にはそんな連綿と続く学生生活の景色と大差は無い。寧ろ身銭を切って対価を支払っている分、依頼者は悪賢い学生達よりも実直だとさえ僕は評価しているのだ。
 ……さて、そんな物想いに耽るのも束の間、依頼を請け合ってから改めて若干の懸念が浮上して来てしまった。我々の会社内で今回の業務を得意分野としている担当者が不幸にも交通事故に遭い、静養を余儀無くされ長期間不在が続くと報告されたのだ……。

 無論、我々はプロ業者の責務として仕事は遂行しなければならないし、この程度の支障は今迄幾度と無く解決して来ている。

 僕の平常心は微塵も揺らいではいなかった。

 手慣れた動作で僕はもう一度受話器を掴み取り、当事者の番号へ繋ぐ。

「もしもし、仕事の代行を依頼したいのですが……」

OSAMU
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