Ⅰ―ⅰ 悠久の王・キュリオⅠ
この世界は強大な力をもつ五大国から成っていた。
精霊の国、吸血鬼の国、死の国、雷の国…
そしてここ悠久の国、王はキュリオ。
美しい銀髪をなびかせ、長身の彼は数人の家臣を引き連れ泉の傍を歩いていた。時折頬に触れるおだやかな風が悠久の平穏さを意味している。
「…ここか」
キュリオは枯れかけた泉に足を踏み入れると、静かに両腕を持ち上げ目を閉じた。すると、彼から発せられたまばゆい光がゆっくり降り注ぐ…と同時に、みるみる輝く水が湧きだし枯れた泉を瞬く間に潤していった。やがてまわりから感嘆の声があがると、安心したようにその場から離れる。
「キュリオ様!!」
見回りで離れていた家臣が声をあげて戻ってきた。
「どうした?」
落ち着いた様子でキュリオが振り返る。
「聖獣の森で赤ん坊の泣き声がしまして、現在数人が捜索に向かっているところでございます!」
「赤ん坊が聖獣の森に?」
(親に捨てられたのか…?)
キュリオは胸を痛めながら自らも聖獣の森へと足を向けた。
やがて森の中を歩いていくと…
一角獣(ユニコーン)が赤ん坊を守るように立ちはだかっているのが見えた。