Ⅰ―ⅱ 置き去りにされた赤子Ⅰ
キュリオは怯えることもなく一角獣の傍に立つと優しく頭をなでる。警戒心の強い一角獣に近づくことが出来るなどキュリオ以外いないだろう。先程まで威嚇する素振りをみせていた一角獣だが、キュリオの瞳をじっと見つめると一歩…また一歩と赤ん坊から離れていく。
「さすがはキュリオ様…」
後方に待機している城の者たちは憧れの眼差しでキュリオに見入っている。
「ああ、心配ない。私が預かろう。」
彼はキュリオが赤ん坊を抱きかかえたのを確認するとどこかへ行ってしまった。人も獣も大自然さえもキュリオが絶対的な王であることを認めているのだ。
「よく眠っている。おなごか…?」
涙のあとが残る小さな赤ん坊の目元を優しく指でなぞると、くすぐったそうに赤ん坊が微笑んだように見えた。キュリオはその愛らしい表情に目を細めると、心配する家臣に城に帰還すると合図を送り、一行はその場を後にした―――