Ⅱ―ⅳ 料理長・ジル
食事を任された料理人たちは大小さまざまな銀の器を並べ、芸術とも見まごうほどに美しい夕食を次々に作り上げていた。見事な手さばきで、彼らに剣を持たせたら一流の剣士だと噂されるくらいだ。
「よしっ!あとは果実を盛りつけて終わりだな!」
「はいっ!」
廊下を歩くキュリオの元に、年期のはいった…しかし張りのある威勢のよい男の声が響いた。
(この声は…相変わらずだな)
口元に笑みを浮かべ、その声に導かれるようにキュリオは迷いなく歩みをすすめる。
見習いであろう若い男が長身の老人に怒鳴られながら懸命に果実を盛りつけている。その眼差しはとても真剣で、横から口を挟む老人はどこか楽し気だった。
「い、如何でしょうか…ジル様」
震えるような声で呟いた若い男が一歩下がり、隣の老人が前にでた。