Ⅰ―ⅲ 置き去りにされた赤子Ⅱ
「お帰りなさいませ、キュリオ様」
恭(うやうや)しくお辞儀をする大臣や女官の間をあるくキュリオ。
「あぁ、今戻った。変わりはないか?」
「はい、何事も起きておりません」
キュリオが胸に抱く赤ん坊をみて誰もがそのまま孤児院に預けるものだと思っていたため、女官のひとりが赤ん坊を受け取ろうと腕を差し出すと…片腕をあげてそれを制した彼はそのまま自室へと歩いていった。
「あ、あの…キュリオ様?」
女官たちが困惑した表情を浮かべると、様子をみていた彼の側近である大臣のひとりが慌てたように見えなくなりつつある王の背を追う。
広間を抜け、白く大きな階段を駆け上がると…口元に笑みを浮かべ、赤ん坊に笑いかけるキュリオの姿があった。