Ⅰ―ⅵ 湯殿Ⅱ
まるで赤ん坊の言葉を理解しているようにキュリオが微笑んだ。
広い湯船の中を歩きながら、中庭を見渡せる場所まで歩く。
頬をかすめる外気に頷くとキュリオはゆっくり腰をおろした。
「…これなら湯渡りもしないだろう」
大きな手の平が赤ん坊の状態を確かめるようにゆっくり体をなでる。
吸い付くような心地よい手触りにキュリオは目元をほころばせていった。
「大丈夫、悪いところは何もない」
赤ん坊もキュリオの言葉を理解しているのか、それとも穏やかな彼の笑顔に安心したのか
さきほどから機嫌よさげに笑っている。
ふと、彼の瞳が真剣さをおび…悲しそうに眉間に皺をよせた。
「お前の父と母はどこにいるんだろうね…こんなに可愛いお前を置き去りにするなんて…」