そうして
しっかり両手で袋を抱えて、その中に皆勤賞と学業賞が折れないように、卒業証書とアルバムで固定しつつ家に急いだ。
ちょっと持ちにくかったけど、傷つくことを避けると思えばためらうことはなかった。
息を弾ませて家まで帰ってくると、卒業証書を広げ、その上にそっとそれらを重ねて、俺の三年間の努力の形を家族に披露した。
いつもより、褒めてくれた。
俺はその時のその瞬間の幸福に、一切の抵抗なく包まれた。
この三年間、
どんな視線を浴びようが、
どんな嫌味を言われようが、
意地とギリギリの根性で精神を保ってきた結果がこれだった。
とても、心地よかった。
俺の努力はこうして、形に残ってくれたのだから。
「え、ごめーん……」
翌日、証書入れにぴっちりと三枚まとめて折りたたまれているそれらを見つけて、俺は、心臓を一瞬で貫かれたかような感覚を味わった。
「別の袋に入れて持って帰ってきてたなんて、しらなかった」
母の通常トーンの謝罪が、頭の奥の方でかすかに聞こえる。
「折っても、ふわっと折ったから、折り目つかないと思ってたや」
うるさい。余計なこと言わないでくれ。せめてごめーんだけでいいから。
怒ってる?これ以上何言えばいい?みたいな顔で、こっちを見るんじゃねぇ。
証書より一回り大きい「優良生徒」を示す賞状が、中心をすっぱり折りつけられ、よれて、閉じ込められていた。
ああ。
偶然じゃないな。
手で引き伸ばしても、俺が必死に折るまいと持ち帰った紙一枚は、伸びるはずもなく。
かつての、本当に本当の優良生徒な先輩は、今頃、額縁に収められた学業賞を眺めるたびに、青春を思い出していることだろう。
俺は、この折れたくらいの学業賞。
よほど、俺らしい。
そんな青春時代を、これがいつまでも形に残していく。
俺の三年間が、こうして終わった。
折れた紙は戻せないから。
まっすぐ額縁に飾れるように、また白紙から、俺を描いていく。