第1章 災い転じて福となす
御機嫌よう
私は今、ゆりかごの上にいます。
何故、そんなことを言うのかって?
それは、私が今分かるのはこれくらいしかないからです。
「アブッブ、ブッアイ」
いやいや、ふざけたわけじゃないですよ!?
私は、「ナンテコッタイ」って言いたかったのです。
でも、口に出してみたらあんなことになってしまったのです。
私は、体も上手く動かなかったらどうしようと思って、まづ、体をおこそうとしました。
ゴンッ!!
痛っ!!
おもいきり、ゆりかごに頭をぶつけてしまいました。
体も口も動かせないなんて私、もしかしたら………
その時、どこかからコンコンと音がして、扉?が開きました。
「クレアお嬢様、メリーです。
失礼いたします。」
どうやら、私は結構お金持ちのようです。
お嬢様ですって、お嬢様!!
キャーーー!!いい響き!!
「おむつを変えますね。」
おぉ!!
これではっきりしました!
私は、どうやら赤ちゃんのようです。
どうりで、口も体も動かないわけです。
「クレアお嬢様、頭を怪我してるではありませんか!?
すぐ、治しますね!!」
あははは
ごめんなさい!!
調子にのって、体を動かしたせいです!!
そしたら、いきなりメリーさんは私の頭に手を置いて、何やら呟き始めました。
「光の守護神様、どうかお助けください。
愛の守護神様、どうかお助けください。
聖の守護神様、どうかお助けください。」
治療?でしょうか?
私の知ってる治療とは、少し違うようです。
消毒液とかガーゼとか使わないのでしょうか?
呟くだけで治るのでしょうか?
と思っていると一つ気づきました。
何か、どんどん頭熱くなってない!?
そしたら、いきなり頭の方から光が見えました。
「アブブブッ!!」
私は驚いて飛び上がってしまいました。
いえ、飛び上がれず助けてもらいましたが。
「クレアお嬢様、落ち着いてください!!
只の魔法ですから、ね?
では、もう一回かけますね?」
魔法!!
今、魔法って言いましたよね!
THEファンダジー!!
ってあれ?
此処は一体何処なのでしょう?
地球ではありませんよね!?
ゲームの中でしょうか?
もしかして、私今はやりの「異世界転生」というものをしてしまったのでしょうか?
今の私には、わからないことだらけです。
質問をしたくてもできませんし!!
赤ちゃんなので!!
ん?
ていうか私は、何故地球について知っているのでしょう?
地球についての『知識』があるのに、何故私には、地球での『記憶』がないのでしょう!?
もしかして、記憶喪失!?
それとも、異世界転生の代償!?
理由は分かりませんが、とりあえず今の私には、前世についての『知識』しかないようです!!
しかし、物は考えようです!!
前世の『知識』さえあれば、私は何だって出来ます!!
「クレアお嬢様、お休みの時間ですよ。
良い夢を。」
いつの間にか、治療は終わっていたようです。
私は、メリーさんの言いつけを守って眠ることにしました。
頭を使いすぎたためでしょうか?
私はすぐに眠ってしまいました。
もしかしたら、これも魔法かもしれませんね?
御機嫌よう
私はハイハイが出来るようになったみたいです。
どうして、そんなことを言うのか?
何故なら、眼が覚めたとき私はハイハイをしている最中だったからです。
お陰様でおでこを怪我しました。
しかし、よく考えてください。
可笑しくないですか?
どうやら、私は本能と自我がいつも同時に目覚めるわけではないようです。
だから、こんなことが起きてしまったのです。
なのでここで
どれだけ成長したのかCheckターーイム!!
いやはや、前自我が目覚めたときは、言葉は発せず、体は起き上がらせれず、散々でした。
もうちょっと成長しているといいのですが………
まず最初に口のCheckから!
「アー、アー、アイシュ!!」
おぉーー!!
言えましたよ!!言えました!!
「アイス」って!!
これでようやく人とコミュニケーションがとれそうです!!
でも、一つ問題が!!
人が、人が来ませーん!!
とそこにドアをノックする音が!!
「クレアお嬢様、失礼いたします。」
「メリー、メリー、ひとがひとがいましぇん!!
どうして?」
私はメリーに抱きついて言いました。
必殺技 UAMEDUKAI☆
「クレアお嬢様、ご家族は只今お出かけ中でございます。
話し相手は私がいたしましょう。」
「じゃあね!!じゃあね!!」
私はここぞとばかりに質問をしました。
まず、私には知らなければいけないことがあります。
「メリー、ここは何処?」
「何処ですか………」
メリーは黙ってしまいました。
多分、子供になんと言えば伝わるのか考えているのでしょう。
「ここはクリアランスとよばれる世界です。
まず、魔法、不思議な能力のことですけども、があります。」
そう言うと、メリーさんは指先に火を灯らせて私に見せてくれました。
本当に魔法なのです。
手品ではないのです!!
「また、魔族、化け物達が蔓延っています。
幸いなことにセーフポイントと呼ばれる魔族が入ってこない場所があるので人間は生きていくことができますが………」
そう言うと、メリーさんはまた黙ってしまいました。
でも、今度は私をじっと見つめていました。
「クレアお嬢様、約束してください。
絶対にお一人で外にはお出にならないと。
セーフポイントは絶対に安全ではございません。
神級以上の魔族にセーフポイントは関係ございません。
だから、クレアお嬢様、絶対にお一人で外にはお出にならないでください!!」
メリーさんはそう言うと
「すいません、失礼します」
と言って私の部屋をでました。
メリーさん、何だか悲しそうでした。
まぁ、追々分かってくるでしょう。
ですが、魔族ですか。
ここは、地球とは違って常に命の危険が伴う世界のようです。
◇ ◇ ◇
それから、私の家族が帰ってくるまでの数日間、私は
メリーさんにたくさんの質問をぶつけていました。
それで分かったことを纏めるとこんな感じになりました。
・魔法が存在し、魔族が存在するということ
・世界はクリアランスと呼ばれていること
・魔族が住む「暗黒大陸」、人族が住む「スイール大陸」、「クーリエ大陸」の3つの大陸を持つこと
・スイール大陸には4つの、クーリエ大陸には5つの国家が存在している
・私が居るのはクーリエ大陸にある最大の国家、聖クレリエント帝国
・そして私は、その帝国の零細貴族の長女
なんかファンタジーですよね!!
私のワクワクファンタジーライフはここから始まるのです!!
しかし、私(私の自我)はまだ家族にあったことないのですが、何処にいんねーん!!
御機嫌よう
私の目の前には今、金髪で超絶美形なお兄さんがいます。
かっこよすぎる!!
超!!私の好みです!!
運命の人をみつけてしまったのです!!
そして、どうやら私の自我は、このお兄さんによって起こされたようです。
なので、多分この人は私にとって関係の深い人だと思うのですが………
すると、開いていたドアから誰かが入ってきました。
「キース兄!!
また、此処にいたのかよ!!
どうして、そいつばっかり構うんだよ!!
俺も少しぐらい………って何でもねーー!!」
あら、走って逃げて行ってしまいました。
まるで、嵐のような人だったのです。
私は、とりあえず現状把握したかったので、目の前の超絶美形なお兄さんに質問をしました。
「しゅみません。
貴方はだれでしゅか?
しゃっきの嵐みたいな人はだれでしゅか?」
すると、目の前の超絶美形なお兄さんは
「ふふっ、嵐みたい………」
と少し笑うと爽やかな笑顔で私の質問に答えてくださいました。
「僕はキース、キース=コーナーだよ!
この家の長男でクレアより六つ上かな?
さっきの人はフィン、フィン=コーナーで次男。
クレアの三つ上だよ!!
僕ら二人共、君のお兄さんだ。
これから、よろしくね!!」
ぐはっ!!
何ですか、これ!!
もう、私結婚出来ませんよ!!
ていうか、したくない!!
私が呆然としている間、ずっとキース兄様は、私を見つめてニコニコしてらっしゃいました。
愛されてる!!
「僕の愛しのクレア。
今日は、皆でご飯を食べるみたいだから、一緒に行こっか?」
と言うや否や、キース兄様は私をお、お姫様だっこしてスタスタと歩き始めました。
王子様や、王子様がおる!!
そう言えば、私は一つ気づいたことがあります。
それは、自分の部屋から出るのが初めてだということ!!
まぁ、もちろん私の自我の話ですよ!?
部屋から出て、見えたのは長い長い廊下でした。
沢山の肖像画や高そうな絵画が、また、高そうな壺が等間隔に並べられていました。
「キース兄様、私達は、零細貴族なのではないでしゅか?
何故、こんなに豪華なのでしゅ!!」
「豪華なのは、廊下とダイニングだけさ。
まぁ、ただ見栄を張ってるだけってこと!!」
なるほど、そういうことでしたか!!
それなら、納得なのです!!
私達が和やかに会話しながら、長い長い廊下を歩いていると、後ろからガッシャーンという音がしました。
そして、それに続いて沢山の足音や
「フィン御坊ちゃま!!」
と呼ぶ沢山の声がしました。
あれ?フィン兄様のことですよね?
「キース兄様?」
私は、少し不思議に思ってキース兄様を見つめました。
もちろん、使いましたよ。
必殺技 UAMEZUKAI☆
キース兄様は笑みを深めると、私を下ろしてその元凶の元に歩いて行きました。
そして、数分後。
キース兄様は、さっきの騒動の元凶であるフィン兄様の首を掴みながら、戻ってきました。
「キース兄様、なにがあったのですか?」
「クレアには関係のないことです。
さぁ、行きましょう。」
私は、一つ学びました。
「キース兄様は絶対に怒らせてはならない」ということを。
ダイニングに近づいてきたのか、物凄いいい匂いが漂ってきました。
キース兄様を見上げると
「もうすぐだよ」
と言って最高の笑顔をくれました。
すると、キース兄様の手辺りから、舌打ちが、聞こえましたが気のせいでしょう。
そうした方が楽なのです。
ダイニングに入ると、母様に抱きつかれました。
やはり、あれですね?
この溺愛体質は遺伝のようなのです。
誰から誰にとは言いませんが。
まぁ、嬉しいですけど。
私はその日、この世界に来て初めての家族団欒というものを経験しました。
御機嫌よう
私の自我は、二歳半くらいから安定してきたのか、自我だけが眠るということは無くなりました。
これで存分にキース兄様、いえ、この世界を観察することができます!!
さて、私は今私の三歳のお誕生日会の会場の準備が終わるのを待っているのです。
控え室で。
とても、緊張するのです。
なんで、私はあんな大勢の前で話さなければならないのか………
この日までの道のりは予想を遥かに超えるほど、大変でした。
◇ ◇ ◇
まず、何故こんなに盛大に祝うのかについて。
貴族の子供達にとって三歳のお誕生日会ってとても重要な意味を持つらしいのです。
この国には、昔からの習慣で親戚以外に赤ちゃんを見せるのは三歳を過ぎてからなのだそうです。
貴族は特に顕著で、必ず三歳のお誕生日会を開き、沢山の人を招いてお披露目をしなければならないそうなのです。
なんと、その時に婚約をする場合もあるのだとか。
三歳児ですよ、三歳児!?
貴族って大変なのです。
お誕生日会の準備は、半年前から始まりました。
最初に始まったのは、礼儀についての講義です。
これが苦痛で苦痛で………
「クレアお嬢様、そこの礼の角度が違います!!
あぁ、そこはもっと姿勢をただして!!」
「「クレア、可愛いよ!!
こっち向いて!!」」
「キース御坊ちゃまもステラ奥様も煩いです!!
黙ってください!!」
いつにも増して、メリーが怖かったのです。
ですが、キース兄様とステラ母様に勝ってしまうなんて、メリーって最強なのです。
また、三か月前くらいになると、私のドレス選びが始まりました。
まぁ、これはキース兄様とステラ母様の管轄です。
いや、まぁ、お二人のことは大好きなのです。
ですが、あれは………
「クレア、これを着てみようか?
似合うと思うんだ!!」
とキース兄様に言われて、白い雪のようなドレスを着ると
「いえ、キース。
それだと、クレアの可愛さが十分に引き出されていないわ!!
こっちも着てみて!!」
とステラ母様に言われ、ピンクのフリフリの私が一番苦手とするドレスを着せられました。
それを拒否すると、
「嫌かい、クレア?
それなら、これはどうだ?
これは絶対に気にいると思うよ!!」
とキース兄様がパープルの妖精のコスプレのようなドレスを差し出し、
「いいえ、キース!!
絶対こっちよ!!」
とステラ母様が薄ピンクの花をモチーフにしたドレスを差し出してきました。
「「さぁ、どっち!?」」
と、二人がこちらを向いて尋ねてきましたが、正直どちらも嫌だったので
「どっちも嫌!!
私はこのドレスがいいってさっきから言ってるじゃん!!」
「「それは、クレアには早すぎる!!」」
と言うとまた、二人は議論を始めるというループが10時間くらい続いていました。
その間、私はずっと立ちっぱなしでした。
あぁ、足が痛い。
ていうか、私は可愛い系の服が大嫌いなのです!!
なのに、あの二人は私に可愛い系の服を着せようとするのですから、困ったものです。
最終的にドレスは自分で選びました。
控えめなレースにドレスのあちこちに散りばめられた星、そんな淡い青紫のドレスを選びました。
まぁ、一目惚れです。
私は、最初にこれを主張したのですが、まぁ、あの二人に潰されまして………
まぁ、つまり本当に疲れました。
◇ ◇ ◇
さて、会場の準備が整ったみたいなので、私は皆様の前に出ていかなければなりません。
あぁ、緊張します。
人、人、人、人………
なんで効果が無いのです!!
「クレア、リラックスだよ!!
リラックス!!
クレアはやれば、できる子なんだから、さぁ、肩の力を抜いて………
行っておいで!!」
キース兄様に背中を押され、私は舞台に向かいました。
心臓はドキン、ドキンと激しく動き、手は震えていました。
しかし、さっきのキース兄様のお言葉に勇気をもらいました。
さて、尋常に勝負!!
三歳のお誕生日会はとても疲れます。
このパーティーは、私の演説?から始まりました。
所詮は、親への感謝の手紙かな?思ったのですが、そんなことはなかったのです!!
なんか、祝辞?みたいな堅っ苦しい文章を暗記して、延々と読まされました。
これ、本当に三歳児のやることなのでしょうか?
「そうよ、クレア。」
とステラ母様は言ってくれました。
しかし、目が、目が泳いでいるのです!!
演説の後は、カイン父様と一緒に挨拶参りをしました。
本当に貴族って疲れますね!?
「あら、クレアちゃん、こんにちは。
あんなお耳が汚れるような挨拶の後に、よく出てこれたわね?」
これ、何だと思います?
私が香水がキツイおばさんの横を通った時に、こっそりと言われた言葉です。
本当に失礼なのです。
「あら、お・ば・さ・ま。
ご機嫌麗しゅう。
そちらこそ、とっても素敵な匂いを漂わせているのですね。
私、とってもクラクラしちゃって参ってしまいました。」
ちゃんと、言い返したので別にいいんですけど。
明日からは、また平凡な毎日が戻ってくることでしょう。
早く、時よ、過ぎろ!!
御機嫌よう
突然ですが、私は最近ある場所に入り浸っています。
それは、書庫です。
我がコーナー家が唯一聖クレリエント帝国でNo. 1と呼ばれるものです。
何故、No. 1と呼ばれるかといいますと、本がとにかく多いから!!
昔の本がとにかく沢山あるのです!!
また、整理もちゃんとしてあり、魔法による検索システムも完備しているので、No. 1と呼ばれています。
雑談ですが、このシステムを開発したのは、我らがメイド、メリーです!!
本当に尊敬するのです!!
しかし、この書庫には問題があります。
それは、とにかく高いこと!!
なのに、この書庫には階段が無いのです!!
まぁ、この建物を設計したのはメリーなのですが、メリーは上級固定魔法【fly-person】が使えるので必要なかったために、階段が無いと………
ふざけんなーー!!
まぁ、それのお陰でキース兄様が肩車してくれたりしたので良かったのですが。
私は最初、帝国の歴史について調べまくりました。
戦争とか魔法の起源とか。
しかし、そんなことはすぐに飽きるわけで、私は一週間も経たずにそれらの本を投げ捨てると、魔術本を漁り始めました。
メリーやキース兄様、ステラ母様には内緒ですけど!!
しかし、彼奴だけにはばれてしまい、とても面倒臭いことになってしまいました。
「魔術は学園でしか習えないんだぞ!そんな本何の得にもならねぇ!」
とフィン兄様が突っかかってくるのです。
本当にガキなのです!!
そして、魔法が習えないのなら、本から自分で学べばいいだけなのです。
最近では、無属性魔法【bright-cannon】が使えるようになったのです。
いつかは前世の『知識』を生かして、オリジナルの魔法を作りたいのです。
ていうか作るのです!!
魔法を使うにあたって、一番大切なのは「イメージ」だと本に書いてあったのです。
それならとても完璧にできるはずです!!
だって、『知識』だけはたくさんあるのだから!!
私は来る日も来る日も開発に勤しみ………ませんでした。
なんか簡単に魔法作れました。
書庫は暑いなと思って、エアコンの機能再現できないかなと思って、まぁ、いろいろとしたわけです。
名前と原理、機能、効果範囲を定めて唱えたら………完成しましたね!!
てへっ!!
その名も無属性魔法【バランス】なのです。
この魔法のお陰で私の部屋は快適なのです。
しかし、一つ残念なことが………
まだ、魔法が使えることを親に伝えていないのです。
だって、もし化け物扱いされたらどうするんですか!?
怖くて、言うなんてこと出来ないのです!!
その所為で、自分の部屋でしかこの魔法が使えないのです。
ダイニングが暑すぎる!!
しかし、今日は伝えるチャンスなのです。
何故なら、今日はステータスカードを神殿に作りに行く日だからなのです。
ステータスカードとは、魔力などの数値を記載するための装置です。
破損することはなく、なくすこともありません。
なんか特殊な魔法がかかっいるらしいのです。
どうやら貴族は3歳の時に、平民は5歳の時にそのステータスカードを、作りに行くのがセオリーみたいなのです。
と考えにふけっている場合ではありませんでした。
もうすぐ私の順番が回ってくるのです。
「クレアー!クレア=コーナー!前に出てきなさい!!」
なんか怒られているみたいなのですが!!
ステラ母様曰く、いつもこの時期は忙しいので、神官様は気が立っているみたいなのです。
何故、今来たのでしょう?
まぁ、慣習なので仕方がありませんが………
「この石板に手を乗せなさい!」
おぉ、早くしなければなのです!!
手を乗せると、不思議なことに目の前にカードが形成されていくのです。
それは、とても幻想的でした。
その時、一瞬小指が熱くなり、パッと見るとそこには赤い糸がありました。
その赤い糸はすぐに消えてしまいましたが………
これも魔法なのでしょうか?
不思議なのです!!
余談ですが、ステラ母様に聞いたところ、ステータスカードは古代文明の遺跡から発掘された貴重な物らしいのです。
-----------------------------------
name:クレア=コーナー
year:3
magic:all
charm:1500
title:赤い糸
-----------------------------------
なんか、とっても簡素なものなのでした。
でも、結構凄くないですか?
全属性ですよ!全属性!
もう、テンションが上がっちゃうのです!!
「はい、次!!」
ってヤバい!早く退かないと!
すると、ステラ母様が此方にやってきて
「クレア、どうだった?」
とカードを見てきました。
かなり気になっていたようなのです。
ステラ母様の反応は上々なので、結構いい結果ということでしょうか?
家に帰るや否や、ステラ母様は私に抱きついてきました。
「うちの子、天才!!」
って、ん?
そんなにチートな内容だったのでしょうか?
どうやら、全属性使えるのは別に貴族の中では普通のことのようなのです。
問題はチャーム(魔力量)にあるようなのです。
チャームの平均的な量はおよそ300で多くて500ぐらいなのだそうです。
王族は多くて、2000ぐらいなのだそうです。
つまり、王族に匹敵するぐらい多いということなのです!!
ステラ母様のテンションが、おかしくなるわけなのです。
また、幼い頃に自然と魔法を使うのは別に珍しいことでは無いそうでなんと、キース兄様も使えてたのことなのです!!
キース兄様とお揃いなのです!!
オリジナルもそこまで珍しいものではないらしく、どうやら子供の方が作りやすいらしいのです。
よかった。私は異常では無いようなのです。
これでイジメプラグは回収出来たのです。
しかし、title(特殊能力) 赤い糸とはなんなのでしょうか?
王子様が私を見つけるとか!?
そんなの、全然嬉しくないのです!!
だって、私が欲しいのは私だけを見てくれる人なのですから!!
政略結婚なんて論外!!
いつか、見つかるといいのです!!
私だけの王子様
私は最近、魔法の練習に精を出しています。
「「クレア、魔法の練習は絶対に家族と一緒にやりなさい!!」」
とキース兄様とステラ母様に言われたので最初は家族の前だけで魔法の練習をしていました。
ですが、家族の皆様はとーーっても忙しいのです。
我慢できなくなった私は、深夜にこっそりと魔法の練習をし始めました。
「クレア、こんな時間に何をしてるんだい?」
しかし、すぐにカイン父様にばれてしまいました。
私は、不思議に思いました。
何故、物音を立てていないのに見つかったのかと。
「カイン父様、何故わかったのですか?」
「それは、俺が魔法を感知したからだよ。
いきなり膨大な魔力が庭に発生したからビックリしたんだぞ!!」
え?感知?
そんなことができるのですか!?
私はこの発見は、深夜の魔法の練習の隠蔽に使えると確信しました。
そして、私は黙々とある魔法を作り始めました。
もちろん、家族の監視があるときだけですよ。
殆どの監視は近衛兵の一人のキリでした。
「キリ、ここが上手くいかないのだけど………?」
「もっと魔力の調節を細やかにしないとできない………できません。
まず、魔力の調節からやったら………やっては如何ですか?」
「じゃあ、キリが教えて?」
「私は………嫌です。」
とまぁ、こんな会話をしながら、私は魔法を作っていきました。
今までのオリジナル魔法とは違い、細やかな魔力の調節、確固としたイメージが必要な為、とても大変でした。
キリがいなかったら、絶対に成功しませんでしたね!
そして、出来た魔法がオリジナル魔法【バニッシュ】なのです。
これで、思う存分、深夜に魔法の練習ができるのです!!
そして、私は意気揚々と深夜に部屋を飛び出し、庭に向かいました。
しかし、そこには先客がいました。
「………お嬢様、もし魔法の練習をするのなら呼んで………呼んで下さいませ。」
「え、キリ!!」
なんとそこには、キリが!!
しかし、どうやら怒らないみたいです。
まぁ、師匠が出来たと思えば、いいですかね?
この日から、私とキリの深夜の魔法練習がはじまったのです。
◇ ◇ ◇
突然ですが、私って友達がいなくない?
学園に通っていないので、しょうがないと思っていたのです。
しかし、学園に通っていないキース兄様には友達がいます。
これはマズイのではないのでしょうか?
「キース兄様、キース兄様はどうやって友達をつくったのですか?
私も友達が欲しいのです!!
ぜひ、教えてください。」
横からまだまだガキくさいフィン兄様が
「お前、友達も作れねーのかよ!ダッセェ!!」
と言っている声が聞こえましたが、無視なのです。
ひたすらに無視なのです。
最近、町の子供と仲良くなったようで、調子に乗っているだけなのです。
「親の紹介かな、確か。
あんまり覚えてなくてごめんね。
でも、クレアならきっと直ぐに友達ができるよ!
だって、こんなに可愛いんだから!!!」
「ありがとうございます。
キース兄様!!
凄く参考になるのです!!」
流石、キース兄様なのです!!
でも、親の紹介ですか………
私はこんな感じなので我儘をあまり言わないのです。
加えて、親に何と言えばいいのでしょう?
ストレートに
「友達が欲しいのです!」
でしょうか?
いや、無いのです。
結局、一晩中この事で悩んでしまいました。
次の日、私は見事に寝不足でした。
なんで、寝なかったのでしょう。
いえ、寝れなかったのですが………
私は、そんな身体を引きずって朝食を食べに行きました。
我が家の食事は、他の貴族とは少し変わっています。
我が家では、家族全員で食べることが原則なのです。
その日、食堂に入ると、もう皆席についていました。
どうやら、私が最後のようです。
「すいません、皆様。
遅れてしまって………」
「いいのよ、クレア。
そうだ、クレアももう4歳になったのよね!
ねぇ、お友達欲しい?」
「欲しいです!欲しいです!ステラ母様!!」
あぁ、あまりに急なお誘いだったので、勢いよく答えてしまったのです。
お恥ずかしい。
チラッとキース兄様の方を見るとウインクしてくれたのです。
どうやらキース兄様が上手く母様に言ってくれたようなのです。
なんてお優しいのでしょう!!
「親に頼らないと何もできない甘ちゃんめ!」
とか聞こえますが無視なのです。
本当に調子に乗りすぎなのです。
私だって、友達くらい作れるのです。
私は、今隣の領主であるルール家に向かっていました。
もちろん、友達を作るためなのです!!
ルール家には私と同い年の双子がいるのです!!
名前はクリスとスフィアだそうで、銀髪黒眼らしいのです!!
なんて可愛らしい!!
会うのがとても楽しみなのです。
しかし、少し心配なことが………
実は、この双子ついこの間悪い人(盗賊みたいな?)に誘拐されたみたいなのです。
その所為で、警戒心がとても強くなっているのだそうです。
しかも、主犯格が子供みたいな人だったらしく、同年代の子を特に警戒してるのだそうです。
え、大丈夫?
友達は欲しいのですが、警戒されるような友達は欲しくないのです!!
私は普通の友達が欲しいのです!!
馬車が急に止まったせいで深く考え込んでいた私は、目の前に座っているフィン兄様に頭から突撃してしまいました。
「お前、何やってんだよ!
石頭なんだから自重しろよ!」
とフィン兄様に言われましたが気にしてないのです!!
えぇ、気にしてませんとも!!
どうせ石頭ですよーーだ!!
「石頭の方が強くてカッコいいですし!
強いですし!ふん!!」
どうです、言い返してやったのです。
我ながら見事な返し方なのです!
フィン兄様も「ぐぬぬ……」とか言っているのです。
一本取ったのです(キラーン)。
そうして、悦に浸っていた私ですが、急に強い視線を屋敷の方から感じたのです。
そう、まるで殺気のようなのです。
目を向けると、そこにはとてもそっくりな二人の子供がいたのです。
多分、あれが例の警戒心の強すぎる双子なのでしょう。
でも、勘違いでしょうか?
なんか私だけを睨みつけてはいないでしょうか?
私が場所から降りるや否や、さっきの双子が私を指しながらポツリと言ったのです。
「「みなさん、この子供が犯人です。
早く捕まえてください。」」
えっ、えーーーー!!!
いつ私がそんなことをしたのでしょうか?
え、ドッペルゲンガーとか?
ははは…………
「何バカなことを言ってるんだい。
僕の天使のように可愛らしい妹がそんなことをするはずがないだろう。」
「そうよ!!
クレアはそんなことはしないわ!!」
流石です!!キース兄様!!ステラ母様!!
すると、双子の一人が
「証拠ならあるよ。」
と一言。
そして、証拠として出てきたのは私が3歳の誕生日プレゼントとして貰った髪留めだったのです。
あ、ヤバい………
何処にもないなぁ〜とは思っていたのです………
かくして、私は大人たちに質問(という名の尋問)をされることになったのです。
何もしていない筈なのですが………多分。
かくかくしかじかなことがあり、私は今大人たちに質問をされているのです。
質問というか尋問ですが………
とりあえずは状況理解ということで、事件の大まかな説明を執事長の方から受けました。
◇ ◇ ◇
-劇録!!執事長は語る!!-
あれは雨が降るある晩のことでした。
執事室にいた私はいつもと同じ様に仕事をしていました。
それは夜の11時を少し回ったぐらいだったでしょうか?
外からコツンコツンと何かが窓に当たる音が聞こえてきたのです。
恥ずかしながら私は少しホラーな物が不得手でして………
10分くらいたった後に勇気をだして、窓から外を覗いたのです。
すると、そこにはなんと私がお仕えする主の大切な大切な子供たちがいたのです。
私は慌ててその子供たちを保護しました。
可哀想なことに傘もささずに外にいたようで、子供たちはずぶ濡れでした。
子供たちの身体を清潔にしていると、いつの間にか子供たちは夢の中。
目が覚めた子供たちに主が何をしていて、何にあったのかと聞いても最初の方は何も話しませんでした。
ようやく聞き出せたのは、子供たちが何者かに攫われて連れ出される寸前に魔法を扱う子供が、魔法を駆使して盗賊を抹殺したということでした。
少々、突飛な話ではありましたがその日は雨だったために外に出ていた者がおらず目撃者がいなかったのです。
なので、私達は子供たちの話を信じるほかありませんでした。
◇ ◇ ◇
そして今に至ると。
「多分、その子供は妖精だったのよ!!
妖精さんが助けてくださったのだわ!!」
「………お嬢様、みっともないです。」
いいじゃないですか、少しくらい!!
ふざけて現実逃避をしてみても何も変わらないことぐらい分かっているのです。
分かっててもやるのが人間なのです。
だから、キリ。
そんな目で私を見つめるのはやめなさい。
絶対、私のことバカにしてるでしょう!!
私はこの事件に見覚えがありました。
キリと深夜の魔法練習をしているときのことです。
突然、遠くの森の方から叫び声が聞こえてきたのです。
遠くすぎて、私には聞こえませんでしたが。
「クレア、ごめん、ちょっと行ってくる!!」
なんて、物凄く焦ったキリが飛び出そうとするから慌てちゃいましたよ。
事情を説明してもらって、急いで森に向かうと、子供が二人盗賊達に襲われていました。
私は咄嗟にさっきまで練習していたオリジナルの魔法を使って盗賊を気絶させ、子供を保護しようとしたのです。
しかし、何故か私の戦闘姿を見た子供は一目散に走って逃げて行ってしまったのです。
ただ、私は盗賊達の身に纏っていたものを全部溶かし、死なない程度の火傷にしただけなのです。
なぜ、逃げたのでしょう?
因みに練習していたオリジナルの魔法は火属性魔法【メルト】と言って、その名の通り万物を溶かす魔法なのです。
調節も出来ますよ!!
そのことを父様に話すと顔を引きつらせながら
「そりゃ、怖いな……」
と言っていたのです。
はて?何が怖いのでしょうか?
そんなこんなでこの問題は解決!!
誤解は無事解けました。
やっと友達が出来る!!と思いましたが、さっきまで物凄く私を警戒していたのに、話しかけてくるでしょうか?
私だったら絶対話しかけないのです!!
断言できます!!
だとすると、これは私から話しかけるのが礼儀というものでしょう。
しかし、何て声をかけましょう?
キリに相談して………無理ですね、はい。
結局私は何も行動をおこせませんでした。
すると、なんと向こうから話しかけてくれたのです。
「初めまして。私はスフィア=ルールと申します。
先程は失礼な態度をとってしまい誠に申し訳ありませんでした。
先日は助けていただいてありがとうございました。」
「私が紛らわしいことをしたのが原因でおこったようなものなのです。
お気になさらず。
お隣どうしなのです。
気楽にいきましょう、気楽に。」
そうして、この事件は幕を下ろし、私には晴れて友達が出来たのです!!
その後、何回かお互いの家を行き来している内に、スフィアとは親友と呼べる程仲良くなりました。
双子の兄のクリスともそれなりに仲良くなりました。
でも、何かが胸に引っかかっているのです。
そう前世の『記憶』が何かを伝えようとしているのです。
クリスと私の間にあるものは、『友情』ではないと。
では、何だというのでしょう?
多分、その結論が出るのは、もっとずっと先のことなのでしょう。
今は分からなくても幸せなのです。
今はまだ………
皆さん、聞いてください!!
今日は、今日は、待ちに待った「収穫祭」なのです!!
一年に一回、秋に行われる祭りで、無事に収穫出来たことを神に感謝する祭りなのです!!
王都は、屋台はもちろんパレードやライブ、王族の演説など、沢山の催し物があります!!
しかし、地方ではまぁ、よくて屋台ですかね?
私達、領主はその祭りを主催する側なので、とても忙しいのです。
今回の祭りは、ルール家と合同で行われます。
コーナー家とルール家は、仲がいいので5年に一回合同で祭りを開いています。
その年が今年というわけです。
「………お嬢様、ステラ様とキース様とスフィア様が呼んで………お呼びです。」
「ありがとう、キリ。」
何もすることがないはずなのです、普通は!!
キリに連れられて、入るとそこには大量の服!!服!!服!!
「頑張ってください、………お嬢様。」
「ありがとう、キリ………」
これは、現実ですか、現実なのですか。
ハハハハハ。
いつもこうなのです。
祭りやパーティーがあるとこうなのです。
「「「クレア、待ってたよ!!」」」
あぁ、綺麗にハモってます。
よし、ここはあの作戦で行くしかありません!!
「皆さん、私はキリと一緒に回るはずです。
ならば、キリの服も考えたほうがいいのでは?」
「それもそうね!!
流石、クレアだわ!!」
対象が2人の方が、1人に対する被害は少ないはずなのです。
もう、ステラ母様はノリノリなのです。
この作戦は成功した、そう思ったのですが………
「クレアには、これが似合うね。
そう思わない?」
「えぇキース、これがいいわ!!」
「でも、それだとキリに合わせる服がないわ。」
「だったら、この服はダメだね。」
まさかの、まさかの展開なのです!!
今回は、何故かすぐに私の服は決まりました。
しかし、キリの服が決まらないのです。
まさか、こうなろうとは………
「………お嬢様。」
そんな目で見るな、キリ!!
不可抗力だーー!!
「皆さん、これはどう?」
「「「それだ!!」」」
どうやら、私が適当に選んだ服がお気に召したらしく、私とキリの服は決まりました。
これからは、自分で服を選ぼうかしら?
そう思った瞬間でした。
さて、何故私とキリの服を選んでいたのかと申しますと、私達はカイン父様と一緒に王都に行ってくるからなのです。
毎年、この祭りの時、領主は王都に呼ばれます。
それにくっついていくというわけなのです!!
「キリと行くのですか?」
「えぇ、そうよ?」
クリスはとても行きたそうでしたが、同行は2人までというのが慣わしらしいので、残念です。
私達の家から、王都まではとても遠いです。
馬車で三月はかかります。
しかし
ここは魔法が使える国なのです。
そういう場合に登場するのが、この「転移装置」なのです。
この「転移装置」、領主の家には必ず設置してあります。
王都にある別邸に必ず繋がれており、とても便利なものです。
貴族でよかったと思う瞬間ですね。
「クレア、危ない人に捕まりそうになったら、この短剣で刺すんだよ!!」
とキース兄様は、私に短剣を渡し、
「クレア、何かあったらここに向かって叫びなさい!!
必ず助けがくるから!!」
とステラ母様は、通信用の魔道具を渡してきました。
私は、今から王都に行くんですよね!?
そうですよね!?
さっと隣にいるキリを見つめるとさっと目を逸らされました。
「………お嬢様、お疲れ様です。」
「ありがとう、キリ………」
そして、私達はカイン父様に連れられて、王都に向かったのです。
最初に気づいたことは、魔力が至る所で感知できることでした。
酔ってしまいそうなのです。
「クレア、大丈夫か?
魔力酔いしてないか?」
「少し………」
「よし、すぐに治してやるからな!!」
どうやら、王都には魔道具が溢れているようなのです。
その結果、こんなにもの魔力が空気中に放出。
魔力酔いを引き起こしたり、風景が霞んで見えたりと一種の社会問題になっているそうなのです。
最近は、魔力を外に放出しないタイプの魔道具も出ているとかで、ここ10年で大分マシになったようなのですが………
「カイン父様、私王都での観光は遠慮しておくわ。
これでは、観光どころではないわ。
キリと一緒に遊んでる。」
「わかったよ、クレア。
でも、慣わしでパレードだけは、貴族席に座って見ないといけないから、それだけは我慢しておくれ。
それが終わったら、クレアは先にお帰り。」
「ありがとう、カイン父様。
そうさせていただくわ。」
私は、今日の夜に行われるパレードだけ見て、帰ることになりました。
まさか、王都がこんなところなんて。
「キリ、何か話して。」
「………お嬢様、何をですか?」
「何かよ、何か!!
そういえば、キリって敬語苦手?」
「………お嬢様、そうです。」
「だったら、やめちゃっていいよ?
私と2人の時は、敬語無しで!!ね?」
「………ですが。」
「命令?」
「………わかったよ。
クレアと2人の時はこう話す。
えーっと、ありがとう。」
「どういたしまして。」
それから、キリとは沢山話しました。
キリの昔のこととか、何故私の家に仕えるようになったのかとか………
え、教えて欲しい?
ダメです!!
キリのプライベートなのです!!
「クレア、そろそろ時間だから準備しないと。
パレードに遅れるぞ!!」
「はーい!!
了解、キリ!!」
すると、キリは何故か顔を真っ赤にしてしまいました。
「キリ、どうかした?
顔熱いよ?
熱でもある?」
「いや、何でもない。
心配してくれてありがとう、クレア。」
私は、侍女に連れられて自室に向かいました。
カイン父様に連れられて、キリと私は、パレードの会場に向かいました。
「カイン父様、パレードには誰が出るの?」
「そうだな。
宮廷魔導士様や王様、皇太子様が、出られるそうだぞ。」
宮廷魔導士様ですか。
どんなパフォーマンスをしてくれるのでしょう?
楽しみです!!
そうだったのですが、会場に着いた途端、私は酷い目眩に襲われました。
大気中の魔力のせいですね、魔力酔いです。
馬車を出て、よろけた私をそっと支えたのはキリでも、カイン父様でもありませんでした。
「大丈夫ですか?お嬢さん?」
私はその人と目が合った瞬間、気を失ってしまいました。
最後に見えたのは、綺麗な銀髪でした。
目を覚ました私を囲んでいたのは、キース兄様にステラ母様、スフィアにクリスにキリでした。
「「「「「大丈夫!?」」」」」
「大丈夫よ。
私どうなったの?」
「………お嬢様は酷い魔力酔いのため、気を失ってしまい、至急家に戻ったのです。」
「クレア、心配したのよ?
体は大丈夫?
だるくはない?」
「大丈夫よ、ステラ母様。
大分回復したわ。」
「そう、なら安心だわ。
クレアは、しばらく安静にしなさい、いい?」
そう言うと、皆は私の部屋から出て行きました。
私はずっとひっかかっていることがありました。
私を助けた人は誰だろう?と。
何故かとても懐かしい気がしたのです。
その人のことを思い出そうとすると、酷く頭が痛みました。
-まだ思い出してはダメよ-
私は深い深い眠りに落ちていきました。
あの事件から早1年
私は、ルール家に度々お邪魔するようになりました。
一週間に7回ぐらいですかね?
え、毎日だって?
聞こえマセーーン!!
しかし、私は大変な失態を犯してしまったのです。
なんと、ステラ母様とキース兄様に「寂しい」と言わせてしまったのです。
お二人を悲しませてしまうなんて私としたことが………
私の初めての友達兼初めての親友であるスフィアはとても可愛らしい女の子なのです。
まず、笑顔がとても可愛い!!
(↑はい、ここ重要!!)
次に相手のことを一番に考えるとても優しい子なのです!!
(↑天使ですか!この子は天使ですか!)
しかし、どうしてこうも男の子っぽいのでしょう?
仕草や姿だけを見ると、男の子にしか見えないのです。
対照的にクリスは女の子にしか見えません。
本当に!!
もう、この二人は仕草や姿だけを交換したらどうなのでしょう?
そんなスフィアについて、最近とても悩んでいることがあるのです。
実は、スフィアが最近とてもませているのです。
まだ、5歳ですよ、5歳!?
「クレア、ここだけの秘密だよ?
実はね、私フィン様を好きになってしまったの?」
「あんな生意気で無神経で人を苛立たせることにしか能が無い馬鹿の何処がいいの!?」
「そんなことないわ、クレア!!
あんなに素敵な方は、この世の中には一人もいないわ!!」
「そういうことを言われるのは、キース兄様でしょう!?
なんで、よりにもよってフィン兄様を………」
私には、到底理解が出来ないのです。
まぁ、でも二人の恋が上手くいって、フィン兄様はもう少しおちついてくれるでしょうか?
「あ、そうだ、クレア!!
クレアには好きな人いないの?
キリとか、クリスとか………」
「生憎いないわよ!!
もし、結婚するなら私はキース兄様と結婚するわ!!」
本当にこれはなんの拷問でしょうか?
私に好きな人が出来るわけがないのです。
キース兄様を超える人などこの世にはいないのだから!!
あぁ、最近それとは別に悩ましいことがあるのです。
何故だか、クリスと顔をあわせて話すことができないのです。
顔をあわせると動悸が激しくなり、顔が熱くなるのです。
ですが、不思議なことに熱は無いのです!!
おかしくないですか!?
何かの病気だと思った私は、毎月の定期健診の時に医師の方に相談しました。
すると、医師はニマニマと笑って
「そういうことはご家族の方に相談するのがよろしいですよ」
とおっしゃいました。
医師でさえ治せない病気なのでしょうか?
私は、執事にお願いして医師の言う通りにしてもらいました。
スフィアの母様、スフィア、母様、私とルール家でお茶会(女子会ともいう)をセッティングさせたのです。
そして、私は皆さんにその症状について相談したのです。
「皆さん、最近私クリスを見るとおかしいの!!
目は合わせられないし、可愛くないことしか言えないし………
どうしてなのかしら?
何か心当たりはありませんか?」
すると、みんな一様にニマニマして何も教えてくれないのです。
あの顔、絶対に何か知っていますよね!ね!
こういう時のために前世の『知識』はあると思うのですが今回は全く役に立たないのです。
どうしたものかと私主催の女子会の後、私は一人で中庭を歩いていました。
何か良いアイデア思いつかないかな〜みたいな感じなのです。
「クレア?」
「はい?」
後ろから声をかけられて、振り返るとそこに居たのはクリスでした。
噂をしたらなんちゃららですね!
あははは!
あぁ、どうしましょう!
症状が悪化しています!
何故か顔もあがらないのですが!
ずっと下を見続けたまんま話すなんて失礼なのです。
人間としてダメなのです。
「大丈夫?何かあった?」
とクリスは頭をポンポンしながら聞いてきますが!!が!!
しかし、それは逆効果なのです!!
限界を迎えた私は走ってクリスの元から走って逃げてしまったのです。
それはもう全力で。
走って、走って、走って
辿り着いたのはスフィアの部屋でした。
「スフィア、スフィアどうしよう!?
私わからないの!!
この感情がわからないの!!
これは一体何?何なの?」
スフィアは私に何も聞かずにそっと抱きしめてくれました。
その時、スフィアが何か深刻な顔で考え込んでいたことを私は気づきませんでした。
そして、私が落ち着いたのを確認するとスフィアは部屋を出て行きました。
その後、自分の部屋に戻ると何か訳のわからない感情に突き動かされるままに、私は泣いてしまいました。
◇ ◇ ◇
それから一週間後、私はスフィアに呼び出されてルール家にいました。
なにやら、どうしても話したいことがあるそうなのです。
スフィアの頼みは断れないのです。
本音を言うと、クリスに会うかもしれないルール家に行くのは嫌でした。
なのに、何故こうもタイミング良くクリスに会うのでしょう?
私は玄関で何かを待っているようなクリスを隠れて見ていました。
すると
「お客様が到着しました」
という執事の声が聞こえ、入ってきたのは
とても綺麗な女の子でした。
見間違いでしょうか?
クリスの顔もほんのり赤くなっているように見えます。
そして、二人は仲良さそうに手を繋いで、私の方に向かってきたのです。
え、来るの?こっちに?
戸惑ってる私を他所に二人は私の目の前に来てしまいました。
「え、クレア最近来てなかったけど何か『隣の方はどなたですか?』あったのか?」
私は思わずクリスの言葉を遮って問いかけてしまっていました。
何故声をかけたのかは分からないのです。
本当に、咄嗟に出てしまったのです。
私は何てことを聞いてしまったんだろうとオロオロしている時、いつもは私の様子にすぐ気づくはずのクリスは、何故か今回は全く気づかず、顔を真っ赤にしながら言いました。
「え!!あぁ、お、俺の婚約者です。
まだ、候補だけど……。」
その言葉を聞くやいなや私はクリスの目の前から逃げてしまいました。
そして、私は遂に気づいてしまったのです。
そう、私のこの気持ちは………
この気持ちの正体がわかってからの一週間のことを、私はよく覚えていません。
朧げに思い出せるのは、キース兄様とステラ母様の叫び声とスフィアとクリスの悲しそうな顔でした。
こういう状態になった理由は、私にもわかりません。
気持ちがわかった瞬間、急に胸の奥が苦しくなり、意識が戻ってきたときには一週間が経っていたのです。
本当に不思議なのです。
それと私には、さっきから気になっていることがあります。
胸の奥にもう一人、自分がいるような気がするのです。
多分、気のせいなのです。
気のせいだと思うのですが………
前世、悪魔、精霊、天使、神様、怨霊………
可能性なんてあげたら、きりがありません。
このことは、あまり深く考えたくないのです。
理由なんてありませんが。
私は、他のことについて、考えることにしました。
さっきのことを忘れることが出来るように。
そういえば、私は、どうしていたのでしょうか?
ずっと私の世話をしていたらしいキリに聞いてみました。
「クレアはまるで別人のようだった。
いきなり叫び出したり、部屋を飛び出したり、俺を殴ったり………
本当に元のクレアが戻ってきて、助かってる。」
「私がキリを殴ったの?」
「いや………あぁ。
でも、気にするな。
あれは、クレアの姿を借りただけでクレアじゃない。
その証拠に魔力が違っていた。」
「魔力………?」
「あぁ。人の魔力って言うのは、同じものは絶対に存在しないんだ。
あの時の魔力は、クレアの魔力とは決定的に違った。
禍々しくて、でも純粋で、不思議な魔力だった。
だから、クレアはもう気にするな。」
あぁ、つながってしまった。
多分、この一週間表に出ていたのは、胸の奥にいるもう一人の自分なのです。
理由はわかんないけど、私を乗っ取ろうとしているのです。
「その人の名前は、何?」
「確か………みずはらくみ、だったかな?
変わった名前だよな。」
その瞬間、私は唐突に理解しました。
これは、私の前世の名前。
ということは、つまり前世の自分が私を、私の身体を狙っているということになるのです。
「クレア、クレアどうした?」
「いいえ、何でもないわ。」
私は動揺していました。
「ごめんなさい、キリ。
少し、一人にさせてくれない?」
「何があったら、呼べよ。」
そう言うと、キリは私の部屋から出て行きました。
私は、いつか無くなるのでしょうか。
私の意識も私の思い出も全て、全て。
無意識のうちに涙が溢れていました。
「………怖い、………怖い。
誰か………助けて………」
すると、いきなり腕を引っ張られ、私は抱きしめられていました。
いつ私の部屋に入ってきたのでしょう?
それは、クリスでした。
「大丈夫、大丈夫だよ、クレア。
俺がクレアを守ってあげる。
クレアの為なら、何でもしてあげる。
だから、クレア安心して、今はお眠り。」
「クリス………、だいすき………」
私は、安心したのか、泣き疲れたのか、そのままクリスの腕の中で意識を失ってしまいました。
意識が覚醒したのは、それから3時間経った後でした。
私は、とても驚きました。
「クリス、目の前にクリスがいる。
あれ、これは夢かな?」
「ふふっ。夢じゃないよ、クレア。
クレアは、俺の腕の中で寝ちゃったんだよ。」
私は、顔が真っ赤になるのがわかりました。
私は、一体何をしたのでしょうか?
何も覚えていません。
穴があったら、入りたいのです。
「そうだ、クレア。
僕、婚約者が出来るみたいなんだ。
もちろん、正式のやつじゃないけど………」
「え、………え?」
私の頭は真っ白になりました。
「婚約………?」
「そう、婚約。
僕、これから用事があるから行くね。」
私は、呆然としました。
目覚めたばかりの私の初恋は、ものの一週間で終わってしまったのです。
私はただ、笑うことしか出来ませんでした。
「ははっ、早いな、終わるの。」
「まだ、終わってないわよ!!クレア!!
その婚約者、どうも怪しいのよね。」
「え、スフィア、どういうこと!?」
私達は、そこからある作戦を立てました。
その内容は………今はまだ言わないほうがいいのです。
その内、わかるのですから。
さぁ、スフィアが私を呼んでいるのです。
いざ、戦場へ向かいましょう!!
私がスフィアと向かった先はルール家の客間でした。
今日は、ルール家にクリスの婚約者候補が来ているのです。
私は客間のドアをバンッと開けると、大声でこう叫びました。
「そこのミーラさん!!
貴方、本当は別に婚約者がいるでしょう。
しかも、他国の次期皇帝!!
逃げ出したことは別に責めません!!
しかし、私の大事な友人を貴方の道具として使うのは止めてください!!
貴方は本当に彼のことが好きなのですか?
正直におっしゃってください!!
さぁ!!」
婚約者候補のミーラは一瞬たじろぎましたが、それでも毅然として言いました。
「な、何を言い出すのかしら?
この人は。
突然、入ってきて無礼よ!!
あんたみたいなブスより、私のような美人の方がクリスさんには、お似合いです!!
邪魔しないで!!」
こう反論したミーラさんにスフィアは確固とした証拠を突き出しました。
「この手紙が見えますか?これは、貴方が貴方の父上である伯爵様ににあてた手紙です。
ここには
『あのお坊ちゃんはとても騙されやすいわ、本当に。
感謝しているわ。
こんな絶好のカモを教えてくれて。』
と書かれております。
さて、これをどう説明しますか?
ミーラさん?」
焦ったミーラさんは、クリスの方を向いて上目遣いをしながら聞いていました。
「ク・リ・ス・さ・ん?
私のこと、見捨てたりしませんよね?
ね?」
そんなミーラさんを冷たい目で見ると、クリスは
「私の大切な友人を侮辱するような貴方のことを私は好きになることはないでしょう。
貴女は私の逆鱗に触れたのです。
良いですよね、父上?
やはり、婚約者にはこの方では務まりません。」
どうやら、クリスはミーラさんを婚約者にする気は無かったようなのです。
チラリとスフィアを見ると、「えへへ」と笑っていたのです。
スフィア、分かっていたなら、教えて欲しかったのです!!
ともあれ、クリスに婚約者ができなくてよかったのです!
めでたし、めでたしで終わるはずでした。
次のクリスの言葉が無ければ。
「なので、僕はクレアを婚約者に推薦しようと思います。」
は?今、なんと?
私?私ですか?
私がクリスの婚約者!?
私が戸惑ってる最中に話はどんどん進んでいき、気づいたら私はクリスの婚約者(仮)になっていました。
どうやら、これはクリスとスフィアによって最初から仕組まれていたことだったみたいなのてます。
ですが?私の気持ちは?
私の気持ちは、どうでもいいのでしょうか?
「少し、少し考えさせてください!!」
私はそう言ってその部屋から逃げ出しました。
頭が混乱して、当分は何も考えられなさそうです。
そうして、私は一カ月の間ルール家を避け続けました。
ルール家からの食事の誘いを親にお願いして断り、遊びに来たクリスとスフィアを私の部屋に入れないと、徹底的に避け続けました。
しかし、遂に親に強制的に話す機会を作られてしまいました。
何とか脱出しようと試みましたが、右も左も凄腕執事に囲まれてしまっては、逃げようがないのです。
私は観念して話し合いにのぞみました。
「「クレア、本当にごめんなさい!!」」
話し合いはそんなスフィアとクリスの謝罪から始まりました。
そして、クリスは正直に告白しました。
「僕は、初めて会った時からクレアが好きだったんだ。
まぁ、俗に言う『一目惚れ』ってやつなんだけど。
だから、どうしてもクレアと両想いになりたくて、恋人になりたくて、婚約者になりたくて、夫婦になりたくて………。
だから、スフィアに頼んでこんなことをしてしまったんだ。
本当にごめん!
一番大事なのはクレアの気持ちなのに………」
「私もクリスのことが好きだよ?
私の気持ちを無視して話を進めていったのは傷ついたけど、それはクリスなりに私のことを思ってしたことなのでしょう?
だから、別にいいの。
私は気にしてないから。
だから、私と付き合ってください!!」
「こちらこそ!
お願いします、クレア!!」
そうして、私達はめでたく婚約することになったのです!!
実際に婚約出来るのは、成人してからなのでまだ『仮』ですが。
私は前世の『記憶』があるので、とても大人びていることは前にも書きました。
しかし、皆さん思いませんでしたか?
クリスとスフィアも大分大人びているんです。
私は、二人が転生者ではないかと疑い、それとなく聞いてみたのです。
しかし、違ったようで「頭、大丈夫?」みたいな視線を送られてしまったのです。
本当に失礼なのです。
この世界の宗教であるミケラン教では魂の輪廻転生を説いているのですが、あまり浸透してないようなのです。
私はもちろん信じているのです。
家族全員ミケラン教信者なのです!!
と、その話は置いといてクリスとスフィアが何故大人びていたかと言いますと、簡単に言うと貴族だからなのです。
貴族は小さい頃から英才教育を受けるのですが、その教育の中には政治や話術などが含まれており子供らしからぬ教育なのです。
かく言う私もその教育を受けたのですが………
そして、特に二人は小さい頃に誘拐もどきを受けているので他の子供たちより余計に顕著に現れたようなのです。
まぁ、自分の意見のように言っていますが全部私の専属侍女の受け売りなのです。
大人びているというのはませているとも言い換えれると思うのです。
そう。
スフィアはとてもませているのです。
クリスはそれほどでもないのですが、スフィアはとてもませているのです。
大事なことなので二回言ったのです。
つまり、どういうことかと言いますと私とクリスが付き合ってから何かと煩いのです。
やれ「キスはしたのか」とかやれ「手は繋いだの」とか………。
そんなスフィアは遂に行動を起こしました。
その結果、私は今何処かの倉庫らしきところに閉じ込められています。
流石にどんなに大人びているとは言え、私はまだまだ子供なのです。
とても怖いのです。
何故私がこの状況になっているのかと言いますと
◇ ◇ ◇
-それは三時間前のこと-
私は母様に呼ばれて客間を訪れていました。
中にはクリス、スフィア、母様、父様、お爺様、クリスとスフィアの母様と父様がいたのです。
この人達がこの場所にいるのは特段不思議なことではないのですが、何故朝八時なのでしょう?
えっ?起きてすぐきたの?
私が戸惑っているとスフィアが元気よく言いました。
「今日は、ステラン山にピクニックに行くわよ!!」
いや、いやいやいやいやいや
スフィアは急に何を言い出すのでしょう!
ステラン山にピクニック!?
確かに今の時期は紅葉がとても綺麗です。
しかし、何故今!?
「今から準備していたら日が暮れちゃいますよ!
馬車の確保や場所の予約、昼食などはどうするのですか?」
スフィアは私がそう言うのを分かっていたようで「ふふふ」と笑いながら答えたのです。
「セッティングは完璧だよ!
私が一カ月前から計画してるんだもん!!
さぁ、クリスもクレアも行ってらっしゃい!」
ん?ん?
聞き間違いでしょうか?
今、二人で行ってこいみたいなこと言わなかった?
「え?もしかして、ピクニックってクリスと私の二人で行くの?」
「もちろんだよ!
あれ?言わなかったっけ?」
言ってない!言ってない!!言ってなーーい!!!
ということで私達はピクニックに行くことになりました。
二人きりで!!!
めでたしめでたし。
ってなるかーー!!
とりあえず抵抗しました。
ドアから窓から逃げようとしても執事に塞がれて無理。
最後の頼みの綱であるクリスを見ると、案外ノリノリだった事実。
私は断れないことを察知して、すぐに着替えに行きました。
服ももちろんスフィアが決めたフリフリのワンピース。
本当は着たくないのに…………
そして、私達は仲良くピクニックに向かったのです。
二人きりでと言っても執事や侍女がいるので実質二人ではないのですが、でもやっぱり緊張するものは緊張するものなのです。
「クレア、楽しい?」
と聞いてくるクリスに笑顔で頷くことしか出来ませんでした。
でも、やっぱり青空の下で食べるランチは最高なのです!!
ピクニックって最高ですね!!
日が沈む頃にはすっかり緊張もなくなり、私はクリスとピクニックを存分に楽しんでいたのです。
帰る時間が来て、私はクリスと手を繋ぎながら馬車に乗り込もうとしました。
しかし、その時怒鳴り声が聞こえたのです。
「てめぇら、金目の物とその馬車を渡せ!!
それにその子供二人もな!
それとそこの女はこっちに来い!
たっぷり可愛がってやるよ!」
私の侍女は盗賊に捕まり、私とクリスの元にも盗賊が迫ってきていました。
私は怯えて金縛りにあったように体が動かなくなっていました。
クリスは両手を広げて、私を一生懸命に守ってくれました。
しかし、その手は小刻みに震えていました。
そして、私は決心したのです。
前世の記憶をフルに使ってみんなが無事に帰れる方法を探すことを。
そして、見つけたのです。
みんなを助けるためなら私は…………
「分かりました。馬車と金目のものと私を渡しましょう。
だから、他の人達に危害を加えないでください!!」
「威勢のいい嬢ちゃんだ。
よし!その提案のった!
もし、後をつけたらどうなるかはわかってるだろう。
おい、てめぇらその女を放してやれ!」
そう言った盗賊の頭は私を連れていきました。
◇ ◇ ◇
こういうわけで、私は今真っ暗な倉庫の中で手足を縛られているのです。
いわゆる監禁ってやつですね!
なんて、呑気なことを考えてる場合じゃないのですが。
さて、どうやって脱出しましょうか?
私はロープで手足を縛られています。
これぐらいはなんとかなるのです。
私の風属性魔法【カット】を使えば、直ぐに自由になれるのです。
後は、鍵がかかった倉庫のドア。
これも火属性魔法【メルト】を使えば大丈夫なのです。
そして、一番の問題はこのドアを出てからです。
多分、外には見張りが最低でも一人ついているでしょう。
さて、これをどうやってくぐり抜けましょう?
これは私が新たなオリジナル魔法を作るしか解決方法はなさそうです。
私は、暗い部屋の中で頭をフル回転させながら考えました。
手が使えないって案外不便なのです。
何も書けないのです!!
そして、私が思いついたのは、透明人間になれちゃう魔法でした。
そこから、頭の中で何となくメカニズムを考えたのです。
この工程を吹っ飛ばすと、何かしらバグを起こしてしますのです。
こういう時、役に立つのが前世の『知識』なのです。
本当に、便利なのです!!
-1分後-
ははは………
全く苦労しないで作れちゃうのが怖いところだと、自分でも思うのです。
私の10個目のオリジナル魔法、無属性魔法【スケルトン】の完成なのです!!
私はすぐさまこの作戦を実践することにしました。
まずは、手足のロープなのです!!
これは、簡単に風属性魔法【カット】で解除することができました。
次の倉庫のドアの鍵も、火属性魔法【メルト】で一発なのです!!
そして、私は渾身の無属性魔法【スケルトン】を発動して、外に出たのです。
その効果は覿面で、私は誰にも気づかれず外に出ることができました。
幸運なことに私が閉じ込められていた場所は先ほどの場所からそう離れていませんでした。
なので、私は無事に家に帰ることができました。
もちろん、無属性魔法【ダッシュ】を使ってです!!
普通は、馬車で1時間の所この魔法を使うと、10分で着いてしまうという優れ物なのです!!
呑気に「ただいま」と言って、私は家の中に入りました。
何故か、ドアの目の前に集まっていたみんなにとても驚かれてしまいましたが………
そして、私は軍の最高責任者であるお爺様に盗賊のありかを告げると、その1日の幕をおろしたのです。