壱章 高校~入学式~
『行きくよー!』
玄関の傍で中に向かって叫ぶ。
「ちょっと待ってよー。」
中から若い女性の声。と・・・
「イタッ!わっ!」
戸とてつもない物音。
『・・・。大丈夫?』
「大・・・わっ!丈夫よ!」
やっと家を出られた私達。行先は学校。
今日は、私達の学校の入学式―――
私の名前は、神宮寺 咲月<ジングウジ サツキ>。14歳の今日から高校1年生。
私の隣で鼻歌を歌いながら法定速度50km/hの道路を70~80㎞/hのスピードで運転するのは、精神科医の籠都 楔那先生。
昔いろいろあってこの人と一緒に住んでいる。
私は10年間のあの日から、先生にお世話になってる。
いわゆる・・・居候。
10年前のあの日・・・それは・・・
私が全てを失った日・・・――――
“君たちは今日から、我が校の生徒である。”
壇上で理事長が、私達に語る。
“今から、この学校の威信と誇りを胸に、高校生活を歩んで行ってほしい。新入生諸君、おめでとう。”
式が終わり、教室に案内された。
自分の席は・・・と。
黒板に張られた席順から自分の名前を探す。
あ・・・あった。
私の席は、窓側の列の一番後ろの席。
「ラッキーじゃん、咲月。」
保護者として隣に立つ楔那はにこっと笑う。
『うん!』
私が席に着くと、前に座った女の子。
保護者は来ていないようで、隣には誰もいなかった。
彼女は真っ先に後ろを向いた。
「ねぇねぇ!初めまして!!あたし鷺朱雪華(サギス ユキ)よろしく!雪華って呼んでよ!!」
突然の事に私は驚いて、喋れなかった。
頭の中で整理しつつ、やっと口が開いた。
『・・・わ・・・私・・・神宮寺咲月。よ・・・よろしく・・・。咲月でいいよ。』
私は出された手に手を当てた。
雪華は、私の手を強く握った。
10年ぶりに、友達ができた。
雪華の笑顔が、涙惟にどこか似てたから。