嫉妬と噂
「今日、同級生だった明日香にあったのよ」
菜摘は夕飯の支度をしながら仕事から帰宅したばかりの卓也に早口で言った
「…明日香って誰だっけ?」
卓也はあまり興味がなさげに返答する
「私の友達だった子よ!卓也は二つ上だったから覚えてないかなぁ?」
卓也は作業着を無造作に脱ぎ捨てると
息子の遊也を抱き抱えた
「あ、いたかなぁ、頭のいい子だろ?」
「頭のいい…まぁ学年では出来てた方よね、両親の墓参りとかいって帰って来たみたい、凄い綺麗なカッコしていかにも都会人って感じでねー…」
菜摘の声のトーンが下がる
「もう帰ってこないのかな、なんて、みんなでよく話してたから驚いたわ、しかもしばらく実家に居るって言ってたから、近いうちにみんなで集まろうって言ってたのよ」
「そうなんだ」
卓也は遊也のシャツを脱がしお風呂に入る用意を始めた
「パパ、今日はお風呂にオモチャいれていい?」
「だめよ!遊也、キチント水を切って外に出さないんだもの」
菜摘は菜箸をくるくるさせながら遊也に冷たく言い放つ
「じゃあ、明日パパがプール出してあげるからそこで遊ぼう」
卓也は優しくそう言うと
風呂場に向かった
「なにあれ、私が悪者みたいじゃん」
菜摘は話をよく聞いてくれない卓也に
疎外された感じで良い気がしなかった
卓也は最近はいつもそうだ
話し半分、残りは無関心
子煩悩なのは助かるけど
菜摘は不満が溜まっていた
「そうだ!有紀にも連絡入れておこう!明日香が帰っているって!とりあえず知ってるけど晴美にも!」
菜摘はイライラする気持ちを切り替え
二人にメールを入れる
「こんばんは!今日偶然明日香にあったよ!暫くこっちに居るみたいだから時間があったらみんなで会おうよ!」
どうせ卓也なんか明日香の事なんか興味ないんだし
みんなと昔話してた方が楽しいわよ
菜摘はメールを送ると
満足そうな笑みを浮かべてスマホの画面を閉じた
※※※
朝
有紀と晴美からメールの返事が届いていた
「仕事のシフトがあるから昼間は無理だけど夜なら平気だよ」
有紀は隣街の病院で看護師をしていた
思っていた通りの返事だった
「大翔がいるから私は外には出れないけど、良かったら家に来ない?」
晴美も菜摘が想像した通りの返事だった
晴美の息子は障害をもつ子で
朝から晩まで晴美がつきっきりでお世話をしていた
きっと私の家においでよと言うだろう
晴美は外に出てお茶なんて出来るはずがないんだから
「じゃあ晴海の家でみんなで会おうよ」
と
菜摘はメールの返信をした