7 目指せ、天下一!
こうして長浜戦国祭り「姫武将コンテスト」は終了した。
そして祭りから一カ月経った。
蛇足ながら結果を発表しておくと、残念ながら雪花ちゃんは優勝を逃してしまった。
ボーナス名産を運び、大量得点を得たのだけど、それ以上の投げ銭を集めた女がいたからである。
「まさか私がネット投票で小判をもらいまくってたとは、ね」
あとから知ったんだけど、兜に仕込まれたカメラが雪花ちゃんとの会話を生中継してて、私はネット民たちからヒロイン扱いされ、小判を投げられまくっていたのだ。
で、知らぬ間に億万長者になってた私を、上田京香が射貫いて優勝というわけ。
そのアイドル武将が私の隣で溜め息をつく。
「…ったく、賞金を使って上京するつもりだったのに予定が狂っちゃったわよ。賞金、あげるんじゃなかったわ」
そう。初代姫武将になった上田京香は優勝賞金をステージの上で雪花ちゃんに譲ったのだ。
雪花ちゃんの身の上話が生中継された状況で30万円をもらって大喜びすればネット民の反感を買うことはまちがいない。それを回避するため賞金を渡したわけである。だがしかし駆け出しのアイドルからすれば30万円は大金なわけで、あれから会うたびにグチグチ言ってる。
「京香ちゃん、そんなに落ち込まないでよ。人気急上昇したわけだしさ」
「そうかもだけど、割り切れないわよ。どうしてあなたはそんなに平気な顔してんのよ?」
そういえばどうしてだろ。
いや、どうもこうもないか。
祭りを終え、こうしてアイドルの友人と一緒に、歳が離れた友達のママの退院祝いに招かれてるのだ。不満があるはずない。しかも、主催者のおごりでめっちゃ美味しいご飯を食べさせてもらえるみたいだし。それに……
「京香ちゃん、いいこと教えてあげようか」
「なに?」
「長浜に関わった武将はみんな出世してんの。豊臣秀吉とか山内一豊とかその他、盛りだくさん。姫武将になった京香ちゃんも武道館コンサートとか狙えるかもよ」
そう言ってあげると機嫌を直してくれた。
私の夢は大学に進学して、いい企業に勤めて大金を稼ぐこと。
賞金ゲットには失敗したけど、祭りで人質にした中に「ドM」の社長がいたみたいでオファーをもらってる。
地元の長浜で出世を狙ってみるのもいいかなって思う、今日この頃である。