11(終)

 わたしとおじさんは家に入る。
 居間には上がらず、通路の奥にあるおじさんの工房に足を踏み入れる。
 おじさんは作業机に置いてあるフィギュアを一体手に取り、わたしに手渡す。
 石田みつなり子(仮)のフィギュア。
「…………」
 わたしは石田みつなり子(仮)のフィギュアの表面を指でなぞる。
「……おじさんって、アニメ観てるだけのおじさんじゃなかったんだね」
「今さらかよ」
 おじさんが突っ込む。余裕を醸し出しているけれど、いつもより声が強張っている。
 わたしは石田みつなり子(仮)のフィギュアを宙に掲げ、隅々まで観察する。まだ着色されていないけれど、造形はほとんど完了しているらしい。わたしがいつも鏡で見ている自分よりも、わたしに似ているような気がする。
 これが、石田みつなり子(仮)。
 これが、わたし。
「ねえ、おじさん」
 わたしは石田みつなり子(仮)のフィギュアを観察し終えて、緊張の面持ちを浮かべているおじさんに言う。
「もっと可愛く造ってよ」
 おじさんは呆気に取られたけれど、しばらくして大声で笑い出し、わたしの頭を撫でる。
 揺さぶられた冠が、くすぐったそうに鳴く。

nk
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