大切な出会いの出口
リリエは駅へ向かった。来た時からパンパンのリュックには、ジョウの皿が押し込まれて更に膨らみ、原型を失っている。
「おじさん!マフラー返しに来ました!」と叫ぶと、駅舎の奥からあの駅員が出てきた。「なんだ、別に返さなくても良かったのに」と始めて見る駅員の笑顔を見てハッとした。「あ、あれ?おじさん、何だか知ってる・・・」とリリエはまさかという思いが本当だったことにやっと気づいた。ペンダントの写真に、にこやかに写る父親と同じ顔をしていたからだ。「リリエ、ごめんな。寂しい思いをさせて。母さんにも済まないと伝えてくれ」と、駅員は娘を抱きしめた。「お父さん、やっと会えた!」と、父親の胸でリリエは泣いている。その胸には「柳」と書かれたネームプレートが光っていた。「このペンダント、ずっと離さずに持ってるんだよ。お母さんがくれたの」と言うと、「嬉しいよ。アリサちゃんのおじいさんがこのペンダントで蘇らせてくれたからね。これを持ったお前が昨日ここへ現れた時、まさかと思ったんだ」と父親は嬉しそうだ。「だから昨日、私が助けてってお願いしたら来てくれたんだね」と父親の制服を掴んだままリリエは言うと、彼はにっこりと頷いた。「お前が持つオーラはきっと幸運を呼ぶ。その不思議な力と性格で跳ねのけられるよ」と父親に言われ、「不思議な性格は余計!」とリリエが返すと、彼は笑った。「お前の幸せを願ってるよ。母さんを楽しませてやってくれ」と頭を撫でられて、「うん、絶対にまたお母さんと会いにくるからね」そう言ってリリエは緑色のおかっぱを激しく揺らしながら、電車へ乗り込んだ。父親が見えなくなるまで手を振ると、大きなリュックが左右に揺れている。「お母さんに何から話そうかなあ」と考えていると実家の綺麗な海と星空が思い浮かび、琵琶湖と夜空が頭の中で重なった。リリエが「ちょっと似てるかも」と嬉しくなったそのとき、リュックの中で皿がキラッと光った。