能当を継ぐもの4
結局、形は蕗の葉を模したものとした。いくつかの形を作っては、近くの小さな滝へ赴き、その下、飛沫がかかるところで四半刻(三〇分)ほどたたずむ。それから銃が撃てるかどうかということを何度も繰り返した。また、万一火皿が湿った時、ひっくり返してその裏側も使用できるような工夫を施すことにした。
こうして、あっという間に翌年の正月を迎えた。正月の慶賀の挨拶の中に、ヒバとニレが来ていた。藤内も交えて、作業場に招き、オオアマオオイと改良版の火皿を見せた。
「これはすばらしい、雨対策にはうってつけです」
ヒバが云う。部品を取り付けて、取り回しについて確認していたが、担いできた二丁の鉄砲に取り付けてほしいと依頼された。予備の鉄砲があるらしく、普段はそれで事足りるらしい。
さらにヒバから部品をもう一つ作ってほしいと云われた。ニレの分だ。すると横から、「わしのもじゃ」と藤内が云う。どうやら藤内の銃にも同じ部品をつけるようにしてほしいらしい。
三月になり、雪が少なくなった頃を見計らって、藤内はヒバの元へと向かった。肩には出来上がった三丁が担がれていた。