カブトムシVS人間
人間の前に回り込んだぽっくんとハナビはその怪物の顔を覗き込んだ。「はっはーん。こいつは人間のこどもだな。幼い顔しよる。」ぽっくんは人間の周りを右往左往に飛び回りながら言う。こんなに大きくてもこどもなのか、とハナビが困惑しているとぽっくんが話を続けた。
「じゃあ俺っちが人間の方まで近づくから後は角で攻撃するなり爪で引っ掻くなりしてなんとしてでもカブゴンのおやっさんを助けるんだな。おやっさん!今からこいつが助けに行くからな!」ぽっくんの声が届いていないのか、カブゴンは目を瞑りなにか悟ったような顔をしていた。「ぽっくんは飛び回るだけで、そのクチバシで攻撃したりはしないのかい。」ハナビはふと不思議に思い、訪ねた。「何言ってんだい。俺っちは鳩。平和の象徴さ。」そう言うと猛スピードで人間のこどもの近くまで寄った。少年はカブゴンを握りしめている。取り敢えずハナビはその少年の腕を角で攻撃してみることにした。ぽっくんの背中に乗ったハナビはギリギリまで少年に近づき、手を角で攻撃し、一旦遠ざかる。これを何度も繰り返す。しかし、少年はカブゴンを手放すどころか、これを楽しんでいる様子さえ見受けられた。何度やっても埒があかないと思ったハナビはぽっくんにあるお願いをする。「今から人間の頭の上を通過し、少年の頭に俺を落下させてくれないか。これはカブゴンを助けるための一か八かの勝負だ。」ぽっくんは驚いた様子だったが、すぐに行動に移しながら言い放つ。
「自分の危険を顧みないなんて、お前さんはやっぱりタダもんじゃないね。ハナビと名付けられただけのことはある。俺っちも責任重大だなこりゃ。」そう言うと、ハナビの頼んだ通り、少年の頭上を通過し、頭の上にハナビを落とした。さすがの器用さだった。「ありがとう、ぽっくん。恩にきるよ。」なんとか少年の頭にしがみついたハナビは頭上の平和の象徴を見つめ感謝の意を表した。「なあに、お前さんは俺っちの友達だからな、これくらいやって当然だ。しかしなんだ。そんなところに一人で飛び乗ってどうする気だい。」その疑問はもっともだった。いくら作戦が成功したとはいえ、勝負は昆虫対人間。まともに戦って勝てる相手ではない。
しかし、ハナビは自信に満ち溢れていた。次の瞬間ハナビは思いがけない行動に出たのであった。