カブトムシVS人間
それを見たガラの悪い仲間たちは一斉に取り乱した。中にはボスを見捨てて逃げ惑う者までいた。カブゴンを捉えた大きな物体の正体が分からなかったハナビは近くの仲間に訪ねる。「今のは何だ?」「ににに、人間だよ!モタモタしてねえでお前も早く逃げろ!」そう言って仲間は木から急いで飛び立っていった。これが人間なのか。この巨大な怪物を喜ばせる花火というものが自分の名前...。そう考えるとハナビは感慨深い気持ちになったが、その怪物の方に目をやると、やつはカブゴンをその大きな手で包み込み、もの凄いスピードで木から遠ざかっていく。其れを他のガラの悪い仲間たちは助けようともせず、一心不乱に逃げ出すのをみて、ハナビは同じカブトムシとして情けない気持ちになった。よし、俺がカブゴンを助けよう、そう決意したのである。
遠ざかる人間を追い始めたハナビであったが、流石は人間、スピードが違いすぎる。地中にいた時、噂には聞いていたが、こんなにも、大きく、素早く、恐ろしい怪物だとは。やはり昆虫は人間には敵わないのか。地上に出てきて何も摂取していなかったハナビは、人間を追う途中、息が切れ、疲れ果ててそのまま地面に落下し始めた。その時だった。バサッ!ハナビの体は地面ではなく、何か柔らかい、
羽根の様な物に落ちた。「おっと危ない。流石俺っち。お前さん見ないカオだね。噂の新入りかい?またカブゴンのおやっさんの所へ使いにやらされたんだろう。」ハッとしてハナビは目を開けるとそこには鋭いクチバシ、決して大きくはないがたくましい翼。愛らしい瞳。ハナビはこの生物が鳥であることはすぐに分かった。「俺っちは鳩のぽっくんさ。新入りさんの名前は?」鳩は人間にも追いつきそうなスピードでカブゴンの元へ突き進みながら口を動かす。「俺はハナビだ。」「え!じゃあ、あんたがビーゴンのおやっさんの後継者かい。じゃあここでカブゴンのおやっさんを助けて、手柄を得ないとな!お前さんを男にしてやるよ、それ!」そう言ってハナビを背中に乗せたぽっくんは更にスピードを上げる。するとすぐさま人間に追いつき、更にぽっくんは果敢にも、カブゴンを手に持つ人間の前に回り込んだ。ハナビはこれから始まる最初の試練に息を飲んだのであった。