六・類友か! 悠
翌日学校に行くと、例のアニメ・漫画同好会の連中が二人して俺に突っかかってきた。
「一体全体どういうことなのですか?」
「説明を求める!」
朝一からうぜぇんだよてめぇらはよ。
「何が」
短い言葉にとっとと失せろ、という意味合いを乗せてぶつける。が、こういう人種はそういう気持ちを読み取るのが苦手というか、できないんだろう。昨日の悠もそうだったし。オタクモードの悠がめんどくさいのと同じ理由で、というかそれ以上のグレードで、こいつらはめんどくさい連中なんだろう。たまらない。
「悠殿は元気がないではないか!」
「悠殿の覇気がないではないか!」
あーはいはい。理由は知ってるが語るつもりはない。
「理由は知ってるぞ?」
「もう本人から訊きましたからね!」
「じゃあ何故俺に話しかける」
俺は悪くない。悪いのはタイミングの悪い衆議院解散と、対応していないディスクを勘違いして借りてきた嶌だ。
「これは彼を励ます方法を考えねばなるまいよ!」
「あーっとこんな所に最高のアイテムがーッ!」
無駄に息の合いまくりな二人組の片割れが制服の胸ポケットから出してきたのは、「映画の前売り特売割引チケットぉ?」
タイトルを確認する。
『行くな! ガーゴン 〜だって爬虫類だもん♪〜』
うおぉぉぉ……。
「さぁ! これに誘うのです!」
「誘うが良いのです!」
意味わかんねー。
「つかこれお前らどこで手に入れてくんだよこんなの……」
「こんなのとは心外ですな! それはこの僕が近所の小学校付近で配っている人に頭下げまくって手に入れてきたんだよ! いや、これ小学生以下に配る物だから……とか言われても、でも高校生も使えますよね? 使えますよね! と食い下がり、小学生に気持ち悪ッ! とか、あまつさえ無言で防犯ブザーを鳴らされても心折れずに土下座付近まで頭を下げて手に入れてきたものなのだよ!」
その熱意はどこか別の場所で使えよお前ら恐ろしいわ!
「つか三枚もらってんならお前ら二人で悠を誘って行きゃ良いじゃんか。俺を巻き込むな」
「この割引券は一枚で三人分割り引けるのですよ!」
「手に入れてから気付きましたでごわす」
アホかと。
「それに……」
それに、何だよ? 俺の言葉に対し、
「同好会を作る条件として、活動内容の報告があるんだよ。そこも基本はザルなんだけどね、けど、ほら。やっぱり僕がいるからその特例をスルーはできないってことで」
横から悠が入ってきた。
「映画を見てレポートを書いて、それを提出するくらいはしろ、と相成った訳です。それにメンバーも多い方が好都合ですし……」
少し申し訳なさそうに同好会の正規メンバー二人は言う。なるほど。自分たちの利益もバッチリある訳か。納得。
「御免被る」
言葉短く返答。二人が大きく落ち込む。レポートなんて書けるかアホんだら。二人は慌ててレポートは自分たち三人だけが書けば良いんです! とか言ってきたが、無視した。そもそも俺は映画自体に興味が無い。アニメに。つーか、ガーゴンには。バカバカしい。