七・必殺剣熱い掌返し! 剣人
そう思って同好会メンバー三人から離れると、後ろから女子に声をかけられた。後ろを振り返ると、右腕に無機質な、そして大きな杖を装着した香織さんがいた。
「さっきの映画の話なんだけど……」
聞いてたのか。
「私、見たいな! 映画。……も、もちろん、剱人君が、良ければ、だけど……」
嘘だろおい何の差し金だよつかどうしてこんな積極的なんだよえー……。
「この映画、気になってたけど一人で見に行く訳には、いかなくて……」
「が、ガーゴン、好き、なの?」
「う、うん……」
香織さんの少し赤らんだ顔を見てしまう。いや、何と言いますか……。細かいことはどうでも良いだろうと思う訳ですよ。ええ。……えぇ!
御免被る発言から一分足らずで俺の発言がひっくり返り、メンバーに田中香織さんの名前が加わった。
「うん。真彦はどうでも良いってことでもう参加することになってるから。よろしく」
悠のこの発言に俺が心の中で舌打ちしたことは気づかれないようにしないといけない。何と言っても香織さんの目の前だ。そうだ目の前だ。うん。
「あとは、瑠夢さんかな」
悠の行動力は舌を巻く領域だと思う。この積極性って何なんだろ。
ちなみに瑠夢――るう、と読む。誰も初見で読めないことが一つの悩みらしい――は剣道部唯一の女子部員だ。
「皆でガーゴン! 楽しみだなぁ」
それだけかよ。