第六歩
「今日俺が航平の家に来たのには理由がある」
翌日の放課後、侑がうちに来た。
何でも大事な話があるらしい。
ソファに明日菜(呼んでないのになぜいる!)と並んで座り、ギレン・ザビの様に立ち上がった侑の演説を聞く。
「単刀直入に聞こう、何故俺には彼女がいないのか?」
坊やだからさ。
「サッカー部なんてところにいたからだ、しかも五軍!」
ふむふむ。
「モテるのは一軍だけ! そっから下は空気扱い、エアー! おれはジョーダンか! アメリカンドリームの体現者か! 勇気を出して一年の時に一軍マネージャーに告白したこともあったさ、しかも二回も! はいそうです皆さんもうご存知ですね完膚無きまでにフられましたさ! 二回とも!」
フったね、二度もフったね! 父さんにもフられたこと以下略。
明日菜は退屈そうにあくびをした。
「そんな俺にもチャンスは巡ってくるんだ、神様は見捨てていなかった!サンキューゴッド、ハレルヤ!ところで諸君、昨日のニュース6オックロックは見たかね?」
「いや、見てないよ」
「実は番組内で今一番女子にモテると言われている、あるスポーツが紹介されていたんだよ」
スノボ? サーフィン?
「何を隠そうそれは……フットサル!」
モテるか、それ?
「要はミニサッカーだろ、サッカーと変わらないじゃん。男らしいイメージがある分サッカーの方がモテるんじゃね?」
「いやいや、そんなことないんだなー。例えばサッカーは男女一緒にプレーしないじゃん。フットサルはするんだよね。女子のゴールは二点、とか変則的なルールにしたりしてさ。女子と知り合える確率はサッカーの比じゃないんだよ」
そうなんだ、サッカープレーヤーが練習代わりにするただのミニゲームかと思ってた。
「なるほど、一理ある」
「しかも同じチームでプレーすると友情が育まれるのは周知の事実、愛情もまた然り」
「ふんふん」
「極めつけとして部活じゃないから仲間さえいればすぐにでも始められる手軽さ、まさに出会い向き! 出会い系スポーツ! 対戦相手の他校の女の子とも知り合えちゃうかも!」
「ほお~」
「と、いうわけで一緒にフットサルやってモテようぜ!」
「なるほど……へ、俺?」
俺、サッカーは観戦専門だしなあ。
「あんま、気が乗らないかも」
「なんで!」
心底意外そうに侑が目を見開いて俺を見る。
なんでって言われてもなー。
なんか気が乗らないんだよな。
やりたいという気持ちはあるけど興味あるのはフットサルじゃなくてサッカーだし、大体フットサルのルール(サッカーとは色々違うはずだ)もよく知らないし。
五人一チームなのとピッチが狭いこと、ボールが一回り小さいことぐらいしか知らない。
「うーん、なんとなく」
「なんだそりゃ! 思わせぶりな態度をとっておいて断る? しかも理由がなんとなく? お前は女子か! ゆるふわカールでモテカワガールか!」
侑が女性誌ノリで怒る。
俺がサッカー好きだから、当然入るものと思っていたんだろう。
「強いて言えば、今の生活が気に入ってるんだよね。学校行って放課後好きな時に帰って、家事した後ゆっくりテレビ見たり本読んだり……」
と、俺がグチグチ言い訳を並べているところに、突然明日菜が割って入った。
「私、やる」