第八歩
その翌日。
昨日のことでグッタリ疲れていた俺は、授業が終わるなり早々に一人で帰宅した。
家に帰って鞄をリビングの机に放り投げ、制服のボタンを外してリラックスする。
住人の許可なく侑がいきなり決めたところによると、これからこの部屋はチームのミーティングルームになるらしい。
勝手に決めんなよと内心思ったが、今までもあの二人はしょっちゅう来てたわけだし、客が来ること自体は嫌いじゃない。
もしかしたら得意の料理をメンバーに振舞う機会があるかもしれないし、「超おいしい!」「三ツ星シェフ!」なんて褒められることになるかもしれない。
もしそんな機会があったらどんな料理を作ろうかとぼんやり考えていると、ふと鞄の中にある一枚の紙のことを思い出す。
今朝下駄箱の前で会うなり、明日菜が渡してきたのだ。
チームメイト募集のポスターだと言ってたけど、何が描かれているか見もしないでしまっちゃったな。
鞄から取り出した厚めの紙を表向きにし眺めた瞬間、言葉を失った。
まず目に飛び込んで来たのは「来れ若人! 共に青春色の汗を流そう、心の友よ! フットサルチームメンバー募集中!」の文字。
古い、キャッチコピーがとにかく古すぎる。
あと心の友って、剛田君以外が使ってるのを初めて見た。
しかもまだ会ってもないのに、心の友。
また青春色とは何色なのか、小一時間かけて問い詰めたい気分だ。
そして何より絵がすごい。
五つの茶色い物体が、ポスターの各所に散りばめられている。
なんだこれ、潰れたでかいみたらし団子?
いや違うな……分かった、切り株だ、我発見せり!
でもなぜフットサルのチームメイト募集のポスターに切り株?
多分森林を守ろうとかそういうエコ的なメッセージが込められているのだろうが、シュール過ぎるしここでエコを持ち出す意味が分からない。
しばらく悩んでいると、俺の脳を小さな何かが刺激する。
茶色い物体は全部で五つ、これはフットサルのポスター。
謎は全て解けた、これは人間だ!
そして残った謎も、じっちゃんの名にかけて解いてゆく。
この白いアメーバのようなものはきっとゴールだな、そして人(と思しき切り株)にくっついている焦げ
茶色の物体はボールだ。
しかしボールは楕円形、その色と相まってどう見てもラグビーボールにしか見えない。
これを明日学校の廊下に貼るのか……。