10

 宴が終わった。
 オヤジは熱燗二本で酔い潰れ、意味不明な言葉をつぶやいている。
 料理のほとんどは母と茉莉が平らげた。もちろん俺も参戦したのだが、いかんせん足が不自由なので、どうしても箸が遅れる。
 その点母は容赦しない。
 箸が重なろうものなら、強引に奪っていく。怪我人に対しての配慮など微塵もなかった。
 夕食は三〇分持たず、綺麗さっぱりなくなった。
 まぁ俺も食える分は食ったので満足だった。大変美味しかったし。料理長の源さんと女将さんの腕は確かなようだった。
「さて。このぐーたら亭主も潰れたことだし、寝る準備よ」
 母が号令をかける。
 茉莉が従い、あっという間にテーブルは片付けられ、四人分の寝床が準備された。
 女将さんの出番は、この母の前では無きに等しいらしい。
 そろそろかな? と様子を伺いに来た女将さんの表情を見れば分かる。この客は放っておいても良い。
 女将さんは廊下に積まれた空の皿やら食器をトレイに載せ、廊下をきしませて戻っていった。
「崇は動かせないからね。それに怪我人を一人で放っておく訳にはいかないでしょう?」
 忙しく布団を敷き直しながら、母親らしいセリフを吐く母だった。

なぎのき
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なぎのき

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