しばし待つこと一時間。
「よし。出来た!」
 私が面白くもないテレビドラマをぼけっと眺めていると、そう言ってお兄ちゃんが立ち上がった。
 どれどれ。
 私は、お兄ちゃんが丹精込めて打ち込んだノートPCをひったくった。
 で画面を見る。
 細かい文字がずらーっと並んでいた。
――よくこんなに文字やら数値が打てるもんだわ。
 我が兄ながら、ちょっと見なおした。
「で、結論はどうなったの?」
「お前なー」
 お兄ちゃんは、がくーっと肩を落とした。
「そこに行き着くまで、オレがどんなに苦労したか」
「でも決まったんでしょ?」
 私はなぜか落ち込んでいるお兄ちゃんの背中を見た。そこには哀愁があった。
「片道二時間の移動で到達可能な旅館を絞り込んだ。後はオヤジとのすり合わせだ」
「ふぅん」
 私は横目でそのリストを見た。あまり『面白そうな』旅館は見当たらなかった。
「お父さんがそれで納得するかなぁ」
「させる!」
 我が兄は力強くそう言い切り、お父さんのいる書斎に向かった。

なぎのき
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なぎのき

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