第二章 首飾りと情報屋 2

「情報屋、お前なんでこんなに強いんだ?」

「教える必要が、ない」

少年の冷たい一言が決定打となり、結局男達はお金を渡して怯えるように去っていった。

「あの人ですね」

「私と同い年くらいでしょうか?」

「まだガキだな」

「すみません、情報屋さんですよね?」

少年はゆっくりと麗羅達のほうを見た。黒い長い前髪で顔はよく見えないが、なんとか見える左目は青かった。

「客、か」

それだけ言うと壊れた扉を気にしながら中に入った。

「入りましょう」

「いいんでしょうか?」

「そういうことだと思いますよ」

三人も情報屋に続いた。

「俺が、情報屋、だ」

「笹間俊輔です」

「綾刀麗羅です」

「流夏だ」

「月野、月影」

「月影さんですか」

俊輔の言葉に月影はコクンとうなずいた。

「すごい、メンバーだな。全員、有名で、秘密や、過去が、ある」

「俺についてもおわかりなんですね?」

「もち、ろんだ。名もなき鳥の、今の、姿」

それを聞いた流夏と俊輔は驚きを隠せなかった。

その言葉をよく理解出来なかった麗羅は不思議そうに三人を見た。

「どこで聞きました?」

「企業、秘密」

そうですよね、と俊輔は苦笑した。

「麗羅は、知っていて俺のところに来たんじゃなかったんですか?」

「詳しいことは、全く」

「まあいずれ、お話しますよ」

「それより、知りたいことは、なんだ」

月影が二人の会話を遮って言った。

「妖宇香という地下世界の女を探している」

「ヨウ、カ」

月影はポツリと呟いた。

「漢字はなんだ」

「妖怪の妖に宇治の宇に香るだ」

「妖宇香、か。お前、流夏、だったな」

「そうだが」

「俊輔は、情報収集が、得意、だな?」

「はい、そうです」

「なのに、妖宇香を、見付けられなかった、理由を、教えて、やる」

月影は流夏を見ながら話し出した。

「俊輔は、お前の過去を、知っているな?」

「一通りは聞きましたので、おそらくは」

「お前の過去を、麗羅に、知られても、構わない、な?」

「え?」

麗羅は急に自分の名前が出てきたことに驚いて顔をあげた。

「構わない」

流夏の言葉はほとんど即答だった。麗羅は驚いて流夏を見たが、そっぽを向かれてしまった。

「ありがとうございます、流夏さん」

「別に知られても困るような話じゃねぇんだよ。それだけだからな」

「でも、ありがとうございます」

「ふん」

俊輔は素直じゃない流夏にクスリと笑った。

「いいん、だな」

「ああ。話を続けろ」

「依頼している側なのに流夏のほうが偉そうですね」

「うるせぇよ!俊輔!」

そんな二人のやり取りに、月影は初めて表情を変えた。

「おもしろい、な」

「そうですね」

「話を、続けても」

「いいと思います」

「そう、だよな」

月影は麗羅に確認をとりつつ、騒がしい二人を無視して口を開いた。

「俺は、妖宇香の、友人だ」

この一言に、流夏と俊輔は口も動きも止めた。

七条雫
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