第二章 首飾りと情報屋 3
「それはどういうことだ?」
「友人、なんだ。昔、偶然、助けた。彼女の、首飾りは、狙われる、から」
「これと似た首飾りだろ」
そう言って流夏は懐から何かを取り出した。
「綺麗」
思わず麗羅が呟いた。それは本当に綺麗な首飾りだった。紫色の宝石、というよりも水晶に近いものが銀色で縁取られている。
「色が、違う、だけだな」
「確かにこれは貴重な物だ。よく狙われる。で、それが何か関係あるのか?」
「何度か、助けた。でも、あまりにも、狙われる。だから、俺が、彼女に関する全ての情報を、隠蔽した」
「全ての情報ですか?」
「全ての、情報」
淡々と言うが、そんなことが可能だとは思えない。
「そんなことが可能だと言うのか?」
「企業、秘密」
月影は淡々と続ける。
「俺は、お前を、流夏を、待っていた。お前が、来たら、妖宇香の、場所を、教える、つもりだったから」
「わかるのか?」
「妖宇香の、情報を、握っているのは、俺だから」
そう言うと月影は立ち上がって奥に消えた。
「よく考えたら、そうですよね。月野月影という情報屋は腕がすごい分、全く見付からないことで有名なのですから」
「情報操作なんて造作もない、か」
「月影さんは、おいくつなんですか?」
「妖宇香と、同じ」
戻ってきた月影はそれだけぽつりと呟いた。
「流夏さん、妖宇香さんはいくつですか?」
「お前より一つ下だ」
「その年で、すごいですね」
「俺も、探している、ものが、あるから」
「あなたが見付けられないものだなんて、実在していないんじゃないですか?」
「それでも、探さなきゃ、ならない」
月影は先ほどと変わらず淡々と喋った。だが、少しだけ表情に曇りを感じた。
「これが、地図、だ。最近、俺の隠蔽が、利かなく、なりつつ、ある。早く、助けて、やって、くれ」
「任せておけ」
「代金のほうはおいくらでしょうか?」
「友人の、身内から、金なんて、とらない。妖宇香は、よく、食料を、お裾分け、して、くれる。それで、十分、だ」
「そうか。助かる」
「では、失礼します。行きましょう」
「はい。失礼します」
「また来る」
そう言って三人は慌ただしく出て行った。
「また、な」
月影は三人の背中を見ながらぽつりと呟いた。