第二章 首飾りと情報屋 6
「もう、さらわれて、いた、のか」
「ああ」
「一足、遅かった、か」
そう言って悔しそうにうつむく月影。想定外だったらしい。
「心当たりはありませんか?」
「ありすぎ、なんだ」
その言葉に流夏もため息をついた。
「狙ってるヤツなんか山程いるからな」
「そうですよね」
「でも、わかる」
そう言うと月影はスッと立ち上がって側にあった棚から地図を取り出した。
「おそらく、ここ、だ」
「何故わかるんです?」
「妖宇香と、会ってから、首飾りを、狙う、ヤツらの、情報は、ずっと、見張って、きた。最近、ここの、ヤツらが、化け物、みたいな、能力者を、雇った、らしい。おそらく、そいつ、だ」
「流石ですね、月影さん」
「早く、行ってやれ」
差し出された地図を流夏が受け取った。
「助かる。だが、どうして妖宇香をそこまで気にかける?」
「友人、だから。それに、俺の、探し物を、一緒に、探してる、から」
「月影さんの探し物ってなんなんですか?」
麗羅が尋ねると月影は口を開きかけたように見えたが、首を横に振った。
「秘密、だ」
「そうですか」
麗羅もそれ以上は特に追及しなかった。
「妖宇香を、連れて、また、来い」
「ああ。お前には借りが出来たからな」
「では、行ってきますね。月影さん」
「お世話になりました」
「また、な」
月影の言葉を背に、三人は地図を持って走り出した。
「こっから一番近いルートは?」
「こっちです」
「調べ済みですか俊輔さん」
「少しは活躍しないと情けないですから」
そう言って苦笑する俊輔に、麗羅も笑い返す。
「早く行くぞ」
「とは言っても先頭は俺なんですけどね」
「うるせぇよ!」
賑やかなやり取りに、麗羅はその二人の後を追いながら笑った。